CPR training(出典:Wikimedia Commons)

先日、ある消防訓練研究会の会合で複数の消防士から聞いたことは、あくまで一般的にだが、「ポンプ隊などの警防担当職員よりも、消防団員の応急手当普及員の方がCPR(心肺蘇生法)講習の教え方がうまい。最新のガイドラインに従った手順などを知っていて、きちんと説明できている」そうである。

たしかに消防団員の応急手当普及員の方々で、活躍されている方は毎月最低2回以上の救急講習のサポートを行っていることが多いとのこと。また、何年も体を使って教えることがほとんどのため、CPRの手順を忘れることがないのだと思う。

※閲覧注意:実際の救急蘇生事例です。

「Agonal Gasps - Bondi Beach Rescue/SureFireCPR」( 出典:Youtube)

PA出動(注1)による現場到着時間は、全国的に救急隊のみの到着よりも、平均約3分早く隊員が傷病者に接触できており、先着したポンプ隊がCPA(心肺停止)の要救助者にAED(自動体外式除細動器)を装着したケースでみると、救命率の向上はもちろん社会復帰などに奏功した例も多いとされている。

(注1)PA出動・・消防ポンプ自動車(Pumper)と救急自動車(Ambulance)が救急現場に同時に出動するような出動隊形。 

もちろん、以前からポンプ隊に対する救急教育や実践研修は、定期的&積極的に取り組まれているとは思うが、CPAの出動対象を想定し、AEDを用いたCPRなどのさらなる教育・訓練の充実が必要であると共に、CPRの市民普及活動の場においても、市民へわかりやすくCPRの重要性を伝えられるようにプレゼンの要領も学ぶ必要があるという関係者からの意見が多い。

■「救急蘇生法の指針 市民用 2015」(監修:日本救急医療財団心肺蘇生法委員会)(総務省消防庁HP)
https://www.fdma.go.jp/neuter/topics/kyukyu_sosei/sisin2015.pdf

今年7月には新潟県の高校で、野球部マネージャーの女子高生(16)が練習終了後、走って学校に帰った直後に倒れ、低酸素脳症で亡くなったケースがニュースとなった。

メディア報道によると、倒れた直後に駆けつけた指導者は「呼吸は弱いけどある」と判断し、AEDは使わなかったと報じられた。

SNS上では「突然、心停止になった時に起きる『死戦期呼吸』を見逃したのではないか」という推測が広った。この女子高生が実際に「死戦期呼吸」をしていたのかどうかは定かではないが、「死戦期呼吸」という名前の呼吸が、突然倒れた人が発している危険なサインの1つだということを知らない人が多いのではないだろうか。


「GASPING. Respiración Agónica. Por Aula Delta3 Formación SL (Agonal breathing:死戦期呼吸)」 (出典:YouTube)

もし、消防士が死戦期呼吸を見逃したことがニュースになれば、かなり社会的な信用が落ちそうな気がする。

多くの消防士にとっては常識だとは思うが、もう一度初心に帰って、一から心肺蘇生法の一連の救急処置や教え方を復習してみてはいかがかと思う。



「心肺蘇生法とAEDの使い方」小松市役所 (出典:YouTube)

また、CPRのガイドラインが海外から伝わってくることから、日本以外ではどのようにCPRを教えているかを学ぶことも大切な気がする。

「how to teach CPR 2017」で検索するとさまざまな教え方があることに気づく。


「2017 Hands-Only CPR Instructional Video/American Heart Association」(出典:YouTube)

国に限らず、CPR講習はいかに受講者の心を動かすかが大切であり、また必要性を実感していただくための醸成ビデオを用いたり、消防士による実際の現場で行ったCPRの体験談を話したりすることは、心に響く内容だと思う。

いかがでしたか?

今回は、ちょっと高飛車な表現が多かったかもしれませんが、世間一般では市民からの消防士に対する信頼と尊敬の気持ちはとても強く、また、熱いまなざしで見られていることをいつも感じます。

多くの消防士の皆さんが、市民にCPRを教えることはとても大切な命の教育です。また、CPRを身につけに来ている受講者は、家族を守るファーストレスポンダーとして、心肺蘇生法がいかに重要な手技であるかを知ることは間違いありません。

もし、現場経験が少なくCPRの手技に自信のない若い消防士の方々は、下記のページなどを両面コピーし、パウチしておくなどして、日々確認することでステップをリマインドしたり、同僚とお互いに確認したりして知識と技術を向上させることもできると思います。

■救命処置の流れ(心肺蘇生法とAEDの使用)(総務省消防庁)
http://www.fdma.go.jp/html/life/pdf/oukyu2.pdf

多くの命が助かりますように!

(了)


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
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