2013/11/25
誌面情報 vol40
2013年4月発売省エネ住宅も好評
同社は今年4月、スマートハウスの新商品「グリーンファースト・ゼロ」を発売した。“住宅が創るエネルギー”と“住宅が消費するエネルギー”が相殺でゼロになる、国の住宅施策「ゼロエネルギー住宅」(政府目標は2020年に設定)に準えた商品。躯体の断熱機密性能を、高性能サッシの採用などにより従来品に比べて30%向上(関東以南でも北東北並みの仕様に)、通風や日射遮へい等の設計の工夫や高効率のエアコンやLED照明の採用に加えて、太陽電池、燃料電池、HEMSを組み合わせて“ゼロエネ”を実現する。
同企画住宅の発売当時は、全戸建住宅に対する販売比率目標を40%としていたが、実績は5月37%、月644%、月は51%と過半を占めるよう7になり、目標を50%以上に上方修正する嬉しい事態となった。
先に挙げた燃料電池と太陽電池の2つの創エネシステムでは、年間約6500kWを発電できるが、4人世帯の標準家庭(東京都40坪の場合)で使用する電力量は5000kW程度のため、約1500kWは余剰電力として近隣へ供給可能。「日中は街の発電所として社会貢献できる」とアピールしている。
同社の省エネ住宅では、太陽電池の電力を、停電時でも1500wまで活用できる赤色の専用コンセントを1口設けており、自家発電の電力を利用できる。日が照っている日中であれば、テレビ、冷蔵庫、携帯電話の充電ぐらいは十分賄えるイメージだ。

震災エリアで普及する制震工法

阪神淡路大震災時に被災地に建っていた約3万戸の全半壊がゼロだった積水ハウス。標準仕様でも地震の揺れに強い同社の住宅だが、地震の揺れ幅を減衰させて人や家財の安全・安心を向上、繰り返しの地震にも躯体性能と財産価値を保全できる制震工法と免震工法の取り組みにも注力している。
制震広報のシーカスは、震度7クラスの地震でも建物の変形量を約2分の1に低減できるというもの。階建2て住戸の耐力壁の一部に長方形のフレームとくの字型のダンパーからなる金属製の専用フレームを組み込む。ダンパーの心臓部である地震エネルギーの吸収体には、エネルギー吸収率約60%、伸び率720%という高性能ゴムを採用。地震エネルギーは、熱エネルギーに変換されて減衰する仕組み。繰り返しの地震にも対応し、耐震装置の耐久性も高いという。
東北の被災地エリアにおけるシーカスの採用率はほぼ100%と好評。免震工法は高価なことと、揺れ幅が大きく敷地に余裕が無いと難しいため、同社ではシーカスの採用を勧めている。
安全な空間確保と防災備蓄
同社は2004年の中越地震直後に、被災後も自立生活が可能な防災住宅なる企画商品も発売。当時からエネルギーの確保、安全な生活空間の確保と水と食料の備蓄の必要性を投げかけてきた。キッチン収納では、地震時の開き戸のロック機能のほか、引き出しの飛び出しを防止する留め金も標準装備。家具については、同社独自の家具転倒防止金具の開発も行っている。
水と食料の確保では、リットル200の雨水タンク、非常食や防災グッズを効率的に収納できるストックシェルターも独自開発。収納庫には地震時にも中身が飛び出さない留め金付き。先に入れたものをスムーズに取り出せる引き出し式の仕様にした。
住宅団地ではコミュニティ支援も
同社は、住宅団地の分譲を手がける企業として、CSRの一環として2005年に独自の「まちづくり憲章」を制定。安心して豊かな生活を送ってもらうためには、まちづくりやコミュニティの育成支援が欠かせないと考えている。
良好な人と人とのつながりを形成するために掲げたキャッチコピーは「ひとえん」。“おはよう”の声が聞こえる街を理想とし、ひとえんをつくるための「場づくり」「きっかけづくり」「組織づくり」の提どもが会社の役割と認識して実践。場づくりでは団地内の公園整備、きっかけづくりではイベント開催、組織づくりでは、住民意見をまとめる組織の設立や加入促進の協力なども担う。イベントでは、フランス発祥の食べ物を持ち寄って語らいながら楽しく過ごす“隣人祭り”などを実施。防災訓練を行うこともある。
防災情報の提供システム開発も

HEMSの見える化機能では、リビング内に設けた専用モニターでエネルギーの使用量も確認できるが、省エネに関する客観数値だけでは、いつしか見られなくなってしまう。
そこで、2010年11月の日本APEC開催を期に横浜のみなとみらいに建てられたスマートハウスのモデル住宅「観環居(かんかんきょ)」には、近未来のスマートハウスの一環として、総務省の補助認定も受けて、“こんな情報がテレビで見られます”という「リビングテレビ」を他社と連携しながら提案している。
地域情報サービスとして、自治体から出される防災情報として、ハザードマップや避難所、避難経路、および避難所で提供してもらえる事柄などを確認できるデモンストレーションも行っている。
誌面情報 vol40の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方