2013/09/25
誌面情報 vol39
機能を失った市町村を支援
東日本大震災の対応で岩手県が特に苦慮したのが、機能を失った市町村の支援だ。県総務部では、災害対策本部を廃止して1カ月後の2011年9月から災害対応における検証を開始し、県庁各部局、全市町村、防災関係機関へのアンケートや、沿岸市町村へのヒアリングを実施し、防災計画や災害対応マニュアルを見直してきた。これに併せ、市町村課では、実際に市町村の支援にあたって得られた教訓をもとに、全国に先駆け、被災直後からの市町村支援のあり方を定めた「災害発生時行動マニュアル」を策定した。マニュアルは、情報を一元化するための伝達ルート、被災市町村への職員派遣体制、被災調査項目などが分かりやすくまとめられている。南海トラフで想定される被災想定地域において沿岸市町村が被災した時にも応用ができそうだ。
東日本大震災では、陸前高田市や大槌町をはじめ、多くの沿岸市町村で職員が犠牲となり行政機能が完全に失われた。災害対策基本法では市町村が被災して機能を失った場合は、都道府県が市町村の実施すべき措置を代わって実施しなくてはいけないことが明記されているが、その具体的な手法については多くの都道府県の防災計画の中でも明確になっていない。
東日本大震災で、岩手県は2日後の13日から現地に職員を派遣し、被災市町村の状況調査を実施した。庁舎が壊滅的な被害を受けた大槌町や陸前高田市には、担当課長級などの職員を数人ずつ派遣し、県や関係機関との調整などに当たらせた。しかし、基礎的自治体である市町村と県では業務の内容が異なり、市町村の事務を県職員がそのまま引き継ぐことは難しい。さらに、県の職員が市町村に赴き権限を持って指示することも困難などの課題が残った。 こうしたことから、県では防災計画の見直しにおいて「市町村の行政機能低下時には要請を待たずに被災市町村へ物資支援を開始」「連絡不通時の市町村へは県調査班を派遣」「大規模災害時には県が自主的に市町村を応援」「被災者情報システムを活用し避難者情報を提供」など大規模災害時における市町村支援の在り方を見直した。これに併せ、市町村課が中心となり、実際に市町村支援にあたった経験から、被災時に市町村を支援するための災害発生時行動マニュアルを2013年2月にまとめた。
マニュアルは、①災害時における市町村課の担当業務、②情報連絡体制・非常招集体制、③災害時における対応、などを定めた課のBCP(事業継続計画)とも言える内容。
具体的には、災害発生から48時間以内に職員を被災市町村に送って被災状況を調べ、万が一、首長など幹部職員が被災していた場合には課長級職員を即座に派遣し、意思決定や指揮命令系統の立ち上げを支援する。さらに県内外の市町村に応援を要請し、発生から概ね1週間で避難所運営など幅広い応急業務の支援を開始する目標復旧時間までを示した計画になっている。
当時、市町村課の情報統括課長として同マニュアルの策定に携わった紺野由夫氏(現政策地域部副部長)は、「策定後も計画は見直している。他の都道府県などでも是非参考にして、逆に不足している点があれば改善していただき、全国で活用できる実践的なものにしていけたらいい」と話している。
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