※画像はイメージです(photo by freeimages)

2014年1月6日、兵庫県警は、担当職員3名で動物虐待に関する相談や通報を受け付ける専用電話「アニマルポリス・ホットライン」を開設。通報を受けた場合は関係する署に対応を指示し、動物愛護相談センター等にも通報し、虐待などの疑いがある動物の状態把握、虐待のレベルを判断するなどの情報を共有する体制をスタートしました。

■アニマルポリス・ホットライン(動物虐待事案等専用相談電話/兵庫県警)
(平日午前9時から午後5時半まで)
http://www.police.pref.hyogo.lg.jp/sodan/animal/index.htm

設立の理由の1つに、世界的に検挙された犯罪者の犯行前の素行調査等で、動物虐待傾向との関連性を指摘する統計が多く、幼少時から犯行直前までの動物虐待行為が、殺人などに発展する可能性もあるとのこと。可能な限り凶悪事件を未然に察知し、予防するための取り組みのひとつとして、設立のきっかけになったそうです。

一般的な動物虐待に関する通報理由としては下記の内容が多いそうです。

・通学中の子供達に歯をむき出して吠えるなど、何かしらの危険が懸念される。

・多頭飼い、または単頭飼いで、不衛生な場所に放置され、または、外に鎖に繋がれた状態で、やせ細り、汚れいて、適切な量の食事や水を与えられていない様子。

・ある特定の家から、動物の叫び声や叩きつける音などが聞こえ、家族が虐待しているのではないか?と思う。

・明らかに噛まれ傷や血痕が体毛に付着していたり、病気や怪我をしている様子。


■動物遺棄虐待防止ポスター(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/poster04.pdf

■動物の遺棄・虐待事例等調査業務報告書 (環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h1903/pdf/full.pdf

開設から4年半経った今、兵庫県警以外の他の46都道府県の警察のホームページを見ても、動物虐待に関する相談や通報を受け付ける専用電話や案内は載っていない状況です。

また、日本一の警察組織規模を持つ警視庁のHPにも「動物虐待に関する相談や通報を受け付ける専用電話」などの文言はなく、どのように対応されているのか警視庁保安課に電話してみたところ。。

「動物虐待や殺傷、飼育放棄などの通報が合った場合、まず、東京都動物愛護相談センターに伝え、事実確認を行ってもらい、センター職員から当事者に口頭、または、文書などで改善を促します。それでも改善が認められず、状況が悪化し、明らかに犯罪に値すると認めらる場合は、当事者の管轄内の警察が必要処置を執ります」との事でした。

悪質なブリーダーや動物保護里親団体による多頭管理の崩壊、一般飼い主の飼育放棄や虐待、悪質環境にあるペットショップでの生体販売など、事態を覚知して通報した時点で、明らかに動物虐待であり、早急に対応する必要がある環境でも、現在の行政対応システム上、通報しても住民の身に危険がない限り、まず動物愛護相談センター(平日午前8時30から午後5時45分まで)が中心となって対応するとのことです。

ただし、「子供達が空気銃で動物を撃っている」「野良犬が次々に子供達を襲っている」などの通報があった場合は、直近の派出所や警察署の警察官が現地へ向かい、対応するそうです。

■ペット・動物について 警視庁
(動物殺傷や虐待、飼育放棄などの通報についての案内はない)
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/faq/soudan/petto.html

杉本彩さんがきっかけとなって設立した「アニマルポリス・ホットライン」

2013年9月に改正動物愛護法が施行され、飼い主の責任が明確化されたことや、罰則が強化されたことなどを受け、兵庫県警は「アニマルポリス・ホットライン」の設置を決めましたが、背景には動物愛護活動をされている女優の杉本彩さんが映画のイベントの際、ある兵庫県議会議員との出逢ったことから始まったそうです。

■「アニマルポリス・ホットライン」 兵庫県に開設!(杉本彩のBeautyブログ)
https://ameblo.jp/sugimoto-aya/entry-11733283834.html

■改正動物愛護管理法が公布され、平成25年9月1日より施行(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/revise_h24.html

■動物の愛護及び管理に関する法律のあらまし -(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/1903/pdf/full.pdf

英国では1824年から協会発足

米国では、1824年に設立された英国動物虐待防止協会 (RSPCA)の存在と活動に感銘を受け、アメリカ国内にASPCA/ American Society for the Prevention of Cruelty to Animals(アメリカ動物虐待防止協会)を約151年前の1866年4月6日に設立しました。

一般市民からの情報提供を受けて動物虐待などに対する捜査を行い、司法警察権を行使して被疑者を逮捕する権限を持つほか、様々な動物環境の改善、虐待や飼育放棄防止、里親捜し活動、ペットの躾やカウンセリングなどを2013年まで行っていました。

現在は、多発する動物虐待事案に対して、法執行官の数が不足し、組織対応能力の限界に達したことから、ASPCAの警察部門の閉鎖を決定。警察官約37,800人を擁し、全米で最大の警察組織であるニューヨーク市警察(NYPD)に業務を引き継ぐ形で、保護された動物の中でも特に残酷な虐待を受けていた犬のために、新しい心身のリハビリ施設を開設したり、警察学校で動物に関する犯罪捜査の指導するなど様々な動物虐待防止活動を続けています。



「Ask the ASPCA: How Do I Protect My Dog From The Hot Weather?」(出典:Youtube)

■ASPCAのビデオリスト(必見!)
https://www.youtube.com/user/aspca/videos

■ASPCA/ American Society for the Prevention of Cruelty to Animals
https://www.aspca.org

■世界各地に設立されている動物虐待防止協会
 (Society for the Prevention of Cruelty to Animals; SPCA)
http://www.spca.org.sg

■動物福祉について(公益社団法人日本動物福祉協会)
http://jaws.or.jp/welfare01/

国際的動物福祉の基本(5つの自由)

飢えと渇きからの自由

・その動物にとって適切かつ栄養的に十分な食物が与えられていますか?
・いつでもきれいな水が飲めるようになっていますか? 

不快からの自由
・その動物にとって適切な環境下で飼育されていますか?
・その環境は清潔に維持されていますか?
・その環境に風雪雨や炎天を避けられる快適な休息場所がありますか?
・その環境に怪我をするような鋭利な突起物はないですか? 

痛み・傷害・病気からの自由
・病気にならないように普段から健康管理・予防はしていますか?
・痛み、外傷あるいは疾病の兆候を示していませんか?そうであれば、その状態が、診療され、治療されていますか?

恐怖や抑圧からの自由
・動物は恐怖や精神的苦痛(不安)や多大なストレスがかかっている兆候を示していませんか?
そうであれば、原因を確認し、的確な対応が取れていますか?

正常な行動を表現する自由
・動物が正常な行動を表現するための十分な空間・適切な環境が与えられていますか?
・動物がその習性に応じて群れあるいは単独で飼育されていますか?
また、離すことが必要である場合には、そのように飼育されていますか?


(公益社団法人日本動物福祉協会のHPから引用)

これから日本はどうあるべきか

国内の様々な動物愛護団体のミーティングやイベントで耳にする「これから日本に必要と思われる組織や理想的な警察による動物虐待事案の対応」については次の通りです。

・警察官の現場到着時、動物が明らかに虐待されていた場合、動物の状態をチェック、虐待のレベルを判断し、その場で虐待者が警察により逮捕され、動物愛護センターなどの関係機関と連携して動物を保護する等の即時対応。
・動物虐待や飼育放棄などの通報手段は、電話だけではなく、オンラインにて、通報者の名前とメールアドレス、そして、覚知時間や場所、文章による状況説明、写真や映像の添付等を完全守秘義務にて通報者の身元が第三者に認識されることなく通報でき、通報者には対応の経緯等を情報開示できる範囲でメールにて伝え、通報者が、通報後どうなったのか確認することができる通報手段の合理化。
・幼少時から大人まで、動物虐待から人への犯罪行為に至ることを予防するための動物愛護教育と動物に関する犯罪予防への具体的なカリキュラム作成とワークショップやセミナーなどの定期的な開催。
・未然に動物虐待の悪化を予測し、適切なタイミングで通報した、心ある通報者への動物愛護に係る表彰制度と警察本部のHP上での公表。(改正動物愛護管理法第41条の3・第41条の4関係)。
・動物取扱業者に係る規制強化として、「犬猫等を販売する際の現物確認・対面説明の義務付け(第21条の4関係)」の対面説明のみではなく、下記の内容でカリキュラムを作り、標準化して、販売、または、譲渡後、飼育に関わるすべての関係者が受講義務を負う。
・基本的な飼育環境等の教育
・ペットのしつけ
・ペットの救急法
・災害時のペット同行避難対策など


■「ペットを飼う覚悟と責任」環境省~ペットの命はあなたにゆだねられています〜
https://www.youtube.com/watch?v=PArDxEbK7jA

いかがでしたか?

日本における動物の飼育環境は徐々に改善されていると感じていますが、劣悪環境下のペット生体販売システムや、心ない飼い主によるペットの飼育放棄、そしてペットの命を守るための様々な「命の教育」は、他の先進国に比べてかなり遅れていると思います。

動物虐待者の逮捕などは警察に頼るほか無いですが、動物虐待や劣悪な飼育環境に居るペットたちを一般人が覚知した場合、SNS等で感情的に発信するのでは無く、できるだけ早く、事実に基づいた状況証拠として、写真や映像撮影、覚知時間や場所の記録、状況説明などを具体的に警察や動物愛護センターなどへ通報する必要があります。どのような内容を通報したらいいのか、統一したフォームが必要だと感じ、任意の内容ですが作成してみました。

下記から、私が作成した「動物虐待に関する相談・通報書」ワードファイルのダウンロードできます。

■「動物虐待に関する相談・通報書」ダウンロード
http://petsaver.jp/download/Report_Animal Cruelty.docx

もし、PDFファイルをご覧になりたい方、印刷して活用されたい方は下記のリンクをクリックして下さい。

■「動物虐待に関する相談・通報書」PDF
http://petsaver.jp/PDF/Report_Animal Cruelty.pdf

皆で協力して、日本から動物虐待を無くし、動物の生活環境を改善しましょう。


■ペットの救急法「ペットセーバープログラム」
〜助かる命を助けるために〜
http://petsaver.jp
info@petsaver.jp

(了)