2020/05/01
危機管理担当者として学ぶべき新型コロナウイルス感染症対策
ハザード・コントロール・ゾーン
ハザード・コントロール・ゾーンは、CBRNE災害に必要な現場管理のための活動区域を整理する手段で、関係者以外の干渉から対応者を保護し、区域内の初動対応者の活動を規制し、二次感染(クロス・コンタミネーション)を最小化するために実施されるもの。大規模かつ多機関が対応する事案では、厳格なゾーニングの設定が全対応者の人員管理(パーソナル・アカウンタビリティ)の助けになる。
これらの管理区域は必ずしも固定されたものではなく、災害の変化に応じて調整が可能である。管理区域の設定は、各機関別のニーズがあるという認識も必要である。例えば、警察機関はテロ攻撃の場合、通常の消防活動と合致しない区域を犯罪現場として全て隔離することも考えられる。これら独自の行動原理の違いを柔軟に調整するためには、全関係機関が総合調整の下、これら管理区域を設定するべきである。
それぞれの区域は、現場の危険度をレベル分けし、ゾーンのレベルをそれぞれに割り振って表現している。これらの区域は、ホットゾーン、ウォームゾーン、コールドゾーンと呼ばれている。また、災害の種類によっては複数の管理区域が存在する場合もある。例えば、複数のビルが倒壊するような大規模な爆発事案の場合では、災害全体の区域内で各建物にそれぞれ対応する管理区域が必要になるかもしれないだろう。特に今回の新型コロナウイルス感染症という“B災害”は“粒子との闘い”という観点から、さらに熟考されたゾーンの設定が必要になることは言うまでもない。
例えば、前述した自覚症状のない“セルフ・プレゼンター”や既往症で普通に通院してくる患者、ケガや事故で救急搬送されてくる患者などに対応するための設定、PPEを装着して治療に当たる医療関係者達の休憩所(リハブエリア)の設定をどうするか?(某大学病院では、空気感染予防が必要な区域をAゾーン(黄色)、飛沫感染予防区域をBゾーン(青色)、接触感染予防区域をCゾーン(緑色)、標準予防区域をDゾーン(白色)、汚染管理区域をEゾーン(赤色)としてカラーコードとして管理しているところもある:環境感染Vol. 23 no.1, 2008 “大学付属病院における新たな感染支援策「感染経路別ゾーニング・システム」導入の経緯と効果より参照)など、動線管理も含めた総合的なゾーニング・マネジメントが必要になるということだ。
米国労働安全衛生局(OSHA)と米国環境保護庁(EPA)では、これらの区域を総称して現場作業区域(サイト・ワーク・ゾーン)と呼んでいる。時には、現場管理区域(シーン・コントロール・ゾーン)とも呼ばれている。その他の国では、対応者が使い慣れた異なるゾーニングの用語を使用しているかもしれない。
さて、それでは具体的にどのように効果的なゾーニング・マネジメントを実施すればよいか考えてみたい。まず基本的な3つのゾーンおよび、その他にも必要になるゾーンの解説から始めよう。
ホットゾーン
ホットゾーン(エクスクルージョン・ゾーン[除外・排除区域の意]とも呼ばれる)は災害現場を囲む区域で、危険物質による直接の脅威、またはその影響による潜在的危険度が高い区域のことである。この区域は、危険物質や化学兵器により汚染されている可能性がある(上記で例に挙げた某大学病院で実践している感染経路別ゾーニング・システムでいうと空気感染予防が必要な区域のAゾーン(黄色)、飛沫感染予防区域のBゾーン(青色)、接触感染予防区域のCゾーン(緑色)、汚染管理区域のEゾーン(赤色)がこれに該当するのではないだろうか)。この区域で活動する感染対応者は、適切な訓練と個人用保護具(PPE)を装着していなければ、ホットゾーン内での活動や支援業務を行ってはならない。ホットゾーンへのアクセスポイントが、人員の安否状況や進入前の個人用保護具(PPE)の確認をするために設置される。
ホットゾーンは、流出物質、爆発またはその他の危険による被害から区域外にいる人を保護するために、十分な範囲に拡張されるべきである。ホットゾーン内での活動は、SWATチーム、US&Rチーム、ハズマットテクニシャン、合同危険評価チーム(JHAT)や爆発物処理技術者など、高度な訓練を受けた人員のみに限定される。
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