2017/04/27
防災・危機管理ニュース

港区区長の武井雅昭氏は26日、区の家具転倒防止対策を強化すると発表した。区営住宅や区立住宅などについて家具転倒防止機器取り付けによる原状復帰義務を免除したほか、これまで高齢者や障がい者世帯を対象にしていた家具転倒防止器具の無償取り付けを、妊産婦を含む世帯とひとり親家庭までに拡大。さらに壁や家具などを傷つけることなく固定することができる器具など、助成品目に新たな器具を追加した。総事業費は約1770万円。
※原状復帰義務とは‥通常の建物賃貸借契約では、賃貸借契約終了後には、賃借人は物件を「原状に回復して」明け渡さならければならない旨が規定されている。ただし、家具の設置による床・カーペットのへこみなど、通常の住まい方をする上で発生するものなどに関しては原状回復の義務はないとされている。
一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会が作成する「原状復帰のガイドライン」によると、賃貸住宅の借り手が所有するエアコンの設置による壁のビス穴などは「通常の住まい方で発生するもの」と見なされ、借り手に原状復帰義務はない。
一方で、大地震などの災害時に家庭内でけがを防止するために重要とされる家具転倒防止器具の取り付け時に発生する穴などに関しては、現在は借り手側に原状復帰の義務があり、家具転倒防止普及の妨げの一因とされてきた。港区では、賃貸住宅の転倒防止器具の取り付けを普及させるため、区営住宅など区が管理する賃貸住宅で原状復帰義務免除を開始した。
同区防災課は「今回の取り組みは非常に大きな一歩だと考えている。エアコン取り付けの壁のビス穴が原状復帰義務を免除されているように、家具転倒防止機器による原状復帰義務免除も全国に広がってほしい」と意気込む。
東京消防庁によると、近年の地震によるケガの原因の3割から5割が家具の転倒・移動・落下によるものとされている。港区では2006年から区内全世帯に対して転倒防止器具を無償で助成するなどの取り組みを続け、現在では6割の住民が対策を施しているという。
■関連記事:賃貸住宅でも、家具転倒防止のためのネジ穴を当たり前の世の中に(丸の内総合法律事務所弁護士/中野明安氏)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2096
■関連記事:地震対策に必須の建造物の耐震化と家具固定。でも賃貸物件では家具の固定ができない?(あんどうりすの『防災・減災りす便り』)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2033
■~震災時に自宅でけがをしないために~家具転倒防止対策の支援を強化します!(港区報道発表資料)
http://www.city.minato.tokyo.jp/houdou/kuse/koho/houdouhappyou/documents/20170426_kisyahappyou_4.pdf
■原状回復基礎知識 一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会
http://www.chinkan.jp/live/recovery/
(了)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方