岩手県陸前高田市での重機を使ったがれきの撤去の様子(出典:Flickr)

行政と災害協定

東日本大震災から6年。大震災と津波による被災地での救済・復旧・復興作業で注目されたのが最前線で活躍する地元建設業協会の奮闘ぶりであった。その背景に行政と建設業協会との間で締結されている災害協定(災害時における応急措置の協力に関する協定)があった。

災害協定の取り決めは、全国都道府県の建設業協会が国(国土交通省地方整備局など)や都道府県、政令指定都市さらには地域によっては市と結んでいるものである。都道府県の建設業協会の傘下にある各支部は、市町村や国の出先事務所(国道事務所や河川事務所)と協定を締結している。災害時における具体的な作業内容を事前に取り決めている場合が大半だ。

協定締結は法律で順守を義務付けられている訳ではない。だが大災害を前提にした復旧や生命財産にかかわる相互間の協定だけに法律での義務づけに準じた早急な判断が求められている。東日本大災害で、宮城県や仙台市など被災自治体が緊急を要する現場作業について地元建設業者を信頼し優先させたのはこの協定があったからである。

(社)仙台建設業協会の「災害応急措置協力会関係集」(2002年1月)の中から、東日本大震災発生の緊急事態に際して初動作業に大きな効果をあげた「規約」を紹介したい。(以下原文のまま、一部省略)。

「災害時における応急措置の協力に関する協定」(平成3年9月1日 仙台市・(社)仙台建設業協会)
仙台市(以下「甲」という)と(社)仙台建設業協会(以下「乙」という)は、災害時における応急措置の協力に関し、次のとおり協定を締結する。
(趣旨)
第1条 この協定は、災害対策基本法の第2条第1項の災害が発生した場合の応急措置について、甲が乙に協力を求める場合及び乙が甲の要請に基づき協力する場合の手続き等を定めるものとする。
第2条 甲は仙台市内に災害が発生し、乙の協力を必要とするときは、乙に対し次に掲げる事項を明らかにし、文書をもって要請するものとする。ただし、緊急を要するときは、電話等をもって要請し、事後文書を提出するものとする。
1.(原文は丸数字)災害の状況及び協力を要請する事由
2.必要とする人員
3. 必要とする資・機材の種類及び数
4. 必要とする活動場所、活動内容及び期間
5.その他必要な事項
2 乙は前項の協力の要請があったときは、乙の組織する災害応急措置協力会作業隊(以下、作業隊)を速やかに出動させるものとする。
 第3条(略)
第4条 要請により災害現場に出動した作業隊は、仙台市職員の指揮者の指揮に従い応急措置を実施するものとする。
2、災害現場に仙台市職員が派遣されていない場合は、作業隊自ら要請事項に従い早急措置を実施するものとする。(以下略)