2016年の世界中の大きな災害を90秒の動画にまとめた「natural Catastorophes 2016 the year in 90 seconds.」(出典:https://www.munichre.com/en/media-relations/publications/press-releases/2017/2017-01-04-press-release/index.html

大手再保険会社であるミュンヘン再保険(Munich Re)が、2017 年 1 月 4 日に「Natural catastrophe losses at their highest for four years」と題したプレスリリースを発表している。

同社によると、2016 年に発生した自然災害による損失額の総計は 1750 億米ドルであり、タイトルが示す通り、2016 年は過去 4 年間の中で最も自然災害による損失が大きかった年であったと述べられている。

図 1 は損失額が大きかった自然災害のトップ 5 である。図では国名と日付しか示されていないが、具体的には次のとおりである。

写真を拡大  図1、「損失額が大きかった自然災害のトップ 5」(出典:「Natural catastrophe losses at their highest for four years」)

1 位:熊本地震(日本)
2 位:長江(揚子江)流域の洪水(中国)
3 位:ハリケーン「マシュー」(カリブ諸国および米国)
4 位:ルイジアナ州での洪水(米国)
5 位:5~6 月に発生した複数の洪水(ドイツ、フランス、ベルギーなど)

なお、図 1 の中で「Uninsured」として示されているのは、保険でカバーされなかった損失の割合である。熊本地震では損失の 2 割程度しか保険でカバーされなかったことが分かる。

また図 2 は、支払われた保険金額が大きかった自然災害のトップ 5 である。保険の活用が進んでいる欧米諸国での災害の順位が上がっているが、ここでも熊本地震がトップとなっている。

写真を拡大 図2、支払われた保険金額が大きかった自然災害のトップ 5 (出典:「Natural catastrophe losses at their highest for four years」)

保険で 2 割程度しかカバーされていないにもかかわらずトップになったことから、熊本地震における損害がいかに大きかったかが、あらためて分かる。

ここでは図 1 で含まれていなかった災害が 2 つ、新たにトップ 5 に入っている。4 位は具体的にどの災害を指すのか不明(注 1)だが、5 位はカナダで発生したオイルサンド生産地での山火事である。

なお、図 1、2 のリストに入った個々の災害については、それぞれ災害の概要を説明するページが別途設けられている(図 2 の 4 位を除く)。ちなみに熊本地震に関するページでは、災害の概要説明の後に次のような指摘がされている。

- 多くの工場では損害がごく僅かだったにもかかわらず、生産停止が長期化した。熊本地震はグローバル化した経済におけるサプライチェーンの複雑さの問題を改めて示した。

- 1995 年の阪神・淡路大震災以降、日本の家庭での地震保険の加入率は 3 倍以上になった。しかしながら他の先進工業国に比べると、保険でカバーされる損失の割合は未だに低い。


また図 1、2 に登場していないにも関わらず、イタリア(8 月)とニュージーランド(11 月)で発生した地震については、個別説明のページが設けられている。

特にイタリアで発生した地震においては、損害額はほかの災害に比べて小さいものの、このプレスリリースで説明されている災害の中で最も死者数が多く(298 名)、また保険でカバーされなかった損害の割合が 99% となっている。欧州では保険の普及が比較的進んでいるが(注 2)、住宅における地震保険の加入率は非常に低いようである。

ミュンヘン再保険に限らず、海外の大手保険・再保険会社は大規模災害や事故などに関するデータを蓄積しており、特に経済損失や保険金額に関するレポートを多数公開している。本連載では今後もこのようなレポートを折に触れて紹介していきたいと考えている。

■ミュンヘン再保険 プレスリリースの掲載場所
https://www.munichre.com/en/media-relations/publications/press-releases/2017/2017-01-04-press-release/index.html

(注 1)4 月 10~15 日に米国で発生した自然災害に関する情報が見当たらない。なお FEMA Disaster Declarations で 4 月に記載されているのはテキサス州での洪水(4 月 17~30 日)だけである。
(注 2)下記リンク先に、2016 年に発生した災害での損失において、保険でカバーされた割合が地域別に示されているが、欧州でのそれは 32% となっており、米国ほどではないが、アジアなど他の地域に比べれば高い。

https://www.munichre.com/site/corporate/get/params_E2110989831_Dattachment/1351570/20160103_RZ_Insured_Uninsured_2016_en.pdf

(了)