2020/01/05
インタビュー
Q.確かに、従業員対策については、全体的に課題だったことがアンケート結果からも分かっています。そればかりか、BCPに積極的に取り組んでいる企業も、BCPにそれほど取り組んでいない企業でも、従業員対策については、それぞれ多くの課題を感じていたことが明らかになりました。言い方を変えれば、一連の台風へ対応では、BCPの入り口である従業員対策にすべての企業が躓いたとも言えるかもしれません。
おそらく、地震と違って、徐々に被害が大きくなる進行災害というものに慣れていなかったのではないかと思います。どの時点で従業員に注意喚起をすればいいのか、出社・帰宅の判断基準を示せばいいのか迷われた企業も多かったのではないでしょうか。地震は最初に大きなインパクトが来ますから、安否確認のタイミングで迷うようなことはあまりないのですが、台風や豪雨のような進行災害は、被害状況の確認であったり、従業員への指示のタイミングが難しいということは大きな特徴として認識すべきです。企業は、タイムラインのような計画を作り、やるべきことを整理しておくべきだと思います。
Q.2018年の大阪府北部地震の際にも、同じアンケートを実施していますが、BCPが機能しない理由については、非常に似た課題が出てきました。
そうですね。BCPが機能しなかった理由については、「社員の意識が低かった」「BCPで風水害は想定していなかった」「被害状況の確認が遅れた」といった項目が高かったわけですが、「風水害は想定していなかった」「被害状況の確認が遅れた」というのは、先ほど説明したように進行災害への対応の課題を表していると思います。
なぜ、大阪府北部地震と同じような結果になったかと言えば、大阪府北部地震は、突発的な地震ではありましたが、出社時間中に起きて、多くの防災担当者が交通機関の中に閉じ込められ、結果的に、風水害などの進行災害と同じように、すぐに災害対応に当たれない状況が生まれたわけです。会社にそのまま行くかどうかの判断が迫られ、会社に行っても全員がそろっているわけではなく、対応にあたれる人数もまばらだった。したがって、「被害状況の確認が遅れた」という項目が高くなりました。
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方