2017/01/30
未来のレジリエンス・テクノロジー
強さとしなやかさを備えた経済社会システムを平時から構築していく発想が国土強靱化です。国土強靱化といえばもっぱら国や地方公共団体の取り組み(特に公共投資)だと思われがちですが、実際には、その実現のためには企業や団体を含めた社会全体の参加が不可欠です。
我々は、国土強靱化が公共投資だけでなく、市場を通じて国民経済や地域経済の成長に寄与し将来性もあることを、強靭化関係市場規模の推計という形でこの2月に発表しました。
その中で国土強靱化関連の民間市場規模は、関連市場も含めると2013年時点で約11.9兆円、2020年には約11.8~13.5兆円になると推計しています。こうした数字を示して民間のみなさんの市場への積極的な参入と投資を呼びかけたかったわけです。
国土強靱化と防災との違いをよく聞かれます。防災は基本的には具体的な災害を想定して、その対策を進めるものです。それに対して国土強靱化は、少しひいた目でとらえ、経済社会システム全体に事前の備えを平時から組み込むアプローチということになります。自然災害が起きて被害が発生し、復旧復興に多大な努力を払っても再び災害が発生するという無限サイクルから逃れるために何ができるか。その実行こそが国土強靱化になります。
首都直下地震の被害想定を例に挙げると、東京都の耐震化率が2008年の約87%のままなら死者1100人、全倒壊棟数17.5万棟という被害が予測されますが、耐震化率が100%になれば被害の約9割は抑えられます。これほど事前対策には効果があります。
ハリケーン・カトリーナでは20億ドルの事前対策を施していればニューオリンズ市の被害1250億ドルの発生が抑えられた
2005年に米国の南東部を襲い、甚大な被害を出したハリケーン・カトリーナも20億ドルの事前対策を施していればニューオリンズ市の被害1250億ドルの発生は抑えられたとの推計もあります。このように事前対策は極めて効果的ですから、国や地方公共団体は国土強靱化基本計画や地域計画を作成し、事前防災を進めているところです。しかし、国土強靱化には国や地方公共団体の取り組みだけでは不十分です。
そこで、民間のみなさんにもビジネスとして積極的に国土強靭化市場に参入していただき、積極的に開発投資をしていただきたいということでその市場規模を推計したわけですが、そもそも「国土強靭化市場」というきちんと定義された市場というものは存在しません。
結局、国の計画に示されている施策に基づいて関連する個別の市場を選び出し、それぞれで推計したものを合算するという方法を取りました。「国土強靱化基本計画」にある12施策分野と3つの横断的分野にまとめられている67の推進方針を検討した上で抽出した市場です。
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