(※地域住民と行政の情報を一体に!eコミュニティ・プラットフォーム【前編】から続きます。)

国や県、市町村、地域住民などそれぞれの立場で使いやすい災害対応システムは異なります。それぞれの組織が業務に合わせて効率的なシステムを考えると違いが出てくるのは当然です。それでも、情報だけは各組織に支障なく行き渡る仕組みにしたい。

例えば、市の災害対応システムは市の担当者が情報を入力するのが基本ですが、大きな災害が起こると手が足りなくなり、情報の入力や取得が制限されます。そして、情報が不十分な中で対策を実施したり、意思決定しなければならない。それは非常に厳しいので、国や県が持っている情報を引き出して、自分たちのシステムにも転用できるようにします。

地域住民も同様に、自分たちが必要とする情報を他の組織から引き出してeコミュニティ・プラットフォームで活用して、総合的な判断をする。新潟県の三条市では自分たちが持っている市の情報と県や住民が持っている情報を同じ画面に統合してひとつの画面に表示し、意志決定に役立てる訓練を行いました。

2014年9月からは国レベルの取り組みとして、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム「レジリエントな防災・減災機能の強化」が始まりました。各府省庁・関連機関、自治体、民間の情報共有を仲介する、府省庁連携防災情報共有システム(SIP4D: Sharing Information Platform for Disaster management)を開発するプログラムです。

熊本地震が起こると防災科研はこのシステムを活用して支援しました。これまでの防災科研は観測、解析、調査に専念していましたが、この地震では災害対応機関の情報共有・活用支援と被災者の生活再建支援を行いました。

 

まず防災科研をはじめとした各種機関が発表した観測調査データを集約し、SIP4Dに取り込みました。地震の翌日には研究員を現地に派遣して、現地で利用されていた紙の情報をスキャンし、位置情報があれば地図に追加しSIP4Dに入力。県や市の災害対策本部や医療救護班、災害派遣医療チーム(DMAT)などのニーズに合わせて紙やデータとして提供しました。

また、防災科研クライシスレスポンスという名前をつけて、集約した情報を災害対応支援地図としてインターネットで一部公開していました。なお、不確実性が高く、一般に公開すると混乱してしまう可能性がある情報は災害対応機関に限定して提供しました。

熊本地震では道路の通行情報が表に出てこなかったので、熊本県庁からの情報を地図化。被災した熊本県と大分県では道路情報の形式が違ったので、これを統合しました。別のソースからの通行情報も反映できるようにしました。また、県や市町村のもつ避難所の情報にDMATからのデータを組み合わせ、より迅速な避難所情報の提供を行いました。

被災後に撮影した空中写真を使って屋根のブルーシートから被災家屋を推定したり、センサーをつけた車が走り回って計測した道路の段差データを共有することで、優先復旧させる道路の選択などにも統合したデータが利用されました。学校を再開する段階で避難者の移動先を検討するときにも使われました。