歪んでいく情報空間のなか、事実から本質をみつめ、なすべきことを考えるには(イメージ:写真AC)

関税ショックは想定されていたのか

米国トランプ氏による関税ショックが世界中を震撼させ、株価暴落を招いた。

日本も例外ではなく、大幅関税増の発表がなされたが、まさかと言わんばかりの後手後手の対応に終始しているように見えているのは筆者だけではあるまい。事前に予想できないはずがなかったことなのにだ。

トランプ氏による関税ショックは想定されていたのか(イメージ:写真AC)

日本の文化的DNAによる欠点とされる「言霊主義」の存在が、歴史的事実として巷では語られている。「言霊主義」とは、口に出したことが現実になってしまうという思想であり、最悪の状態を想定して口に出してしまったら、実現してしまいかねないので、あえて悪いことは想定せず、口にも出すべきではないというものである。

認識していない方も多いかもしれないが、結婚式で「別れる」、受験前に「落ちる」という発言を忌み嫌うのがその現れでもある。発言内容が現実になったり縁起が悪いといったりするのは非科学的なのだが、人の行動志向は科学だけでは割り切れない思想が存在するということだ。

リスク管理に従事する方々には釈迦に説法だが、リスクというものは事前に想定しておかなければ、いざ顕在化した時の被害を最小化する対策はできない。あたり前である。しかし、今回の関税ショックによるリスクは本当に想定されていたのだろうか。

石破総理が米国訪問しトランプ氏と会談した後の記者会見で「トランプ大統領は『関税男』で知られる。米国がもし日本に関税をかけるとすれば、報復関税を行うか」と問われた際に「仮定の質問にはお答えしかねます、というのが、日本のだいたいの定番の国会答弁でございます」と答えている。

事実から問題の本質をつかみ、解決に向けた発言をして行動しなければリスクマネジメントはできない(イメージ:写真AC)

実際、この種の国会答弁はよく行われている。都合の悪い質問には答えずに逃げるテクニックである。一部では官僚答弁とも言われ揶揄されるが、界隈では大人の答弁であるかのように正当化されてもいる。しかし、問題の本質に向きあい、課題を明確にして、泥をかぶり、少々事を荒立てようとも解決を目指した発言をして、実際に行動しなければ、リスクマネジメントなどできない。

言いにくいことをストレートにズバッと表現すると、失言かのように批判が集中することも多く、過激な思想の持主かのように人格攻撃まで展開する事例もある。その場合、発言の本質的意味を汲み取らず、攻撃することを目的にするような、言葉尻を切り取っての集団リンチにも発展しがちである。こんなことが常態化すると、本当に伝えたい情報が隠れる、いや隠されてしまう。

トランプ大統領は石破総理との電話会談の後に、日本に対する発信を行っている。その内容を丹念に読めば、日本のとるべき方向性、ディールとしてのWinWinは目指せるはずだ。そして一部ではTPPと同様のディールが交渉され始めているが、本来日本がこの立場にいたはずなのにと首を傾げるのだ。