2017/02/21
未来のレジリエンス・テクノロジー

(※地図の未来、ドローンの未来。ドローンを組織の災害対策に生かせ!【前編】から続きます。)
災害情報を得るにはドローンを使った方法が最も迅速です。ドローンの登場で市民が自ら撮影し、自分の町の被害状況をすぐに把握できます。2015年9月に茨城県常総市で鬼怒川の堤防が大雨で決壊すると、国土地理院がドローンを使って撮影し、映像を公開しました。
同じようにドローンを使った情報収集が市民も可能で、クライシスマッピングに利用できる時代になっています。大学ではドローンの操作訓練や撮影した画像を地図に落とし込むノウハウも教えてもいます。そして、地図情報をどう活用するかも話し合っています。
私が代表を務めるNPO法人クライシスマッパー・ジャパンでは災害ドローン救援隊「DRONE BIRD」計画もスタートさせました。発災時に自分たちで空から写真を撮影し、画像の後処理も実行して充実した地図をつくるコミュニティです。
ドローンが数万円で購入できるようになり、200g未満のドローンなら航空法の規制対象に入りません。災害支援のために撮影データを公開すると、インターネットの向こう側で待ち構えている320万人のマッパー仲間がトレースして、地図の更新を助けてくれます。
ドローンで撮影したデータを受け取って共有するプラットフォームのオープンエアリアルマップ(OpenAerialMap)もようやくできました。撮影した画像を補正してくれる無料ソフト、オープンドローンマップも利用できるようになりました。こういった技術を組みあわせることで一般市民が参加し、災害時に協力できる体制が整いつつあります。
どこで災害が起きても対応できるように、2020年までにDRONE BIRDの隊員100名を育成し、全国10カ所に基地の設置することが目標です。何か起きたときに町がどうなっているか、地元の人たちが協力してドローンで撮影して情報を地図に落とすことが大切だと考えています。
今後、首都圏に数千人がドローンを持つ時代になると、自宅周囲1kmほどをドローンで撮影できるので市民のドローンで広範囲をカバーできるようになります。ですから協力すれば大きな航空写真をつくれます。
マルチコプター型ドローンよりも飛行距離のある固定翼型ドローンも値段が下がってきています。災害が起きたときに手動で操作するのはトラブルのもとになるので、私のドローンのように投げるだけで飛び立ち、戻ってくる自動制御タイプが主力になると思います。

自治体と災害時に航空法が免除となるような防災協定を結び、ドローンを活用できる体制を整えています。NPO法人クライシスマッパーズ・ジャパンは2016年9月20日に神奈川県大和市と協定を結びました。災害が起こるとすぐに大和市でドローンを飛ばし、撮影したデータを大和市に提供します。そのデータはもちろん公開されます。
災害時にも使える地図情報のひとつに地上からの画像データがあります。Googleのストリートビューは車から撮影していますが、スマートフォンを使って歩きながら撮影し、画像を共有することで歩行者目線のストリートビューを作成できます。
画像認識ソフトがレベルアップして道路標識も自動認識できます。以前は右折禁止や制限速度をその都度入力していましたが、これが町中の写真を撮るだけで自動化できようになっています。画像分類の精度が上がっているので車や建物、樹木などの判別もできつつあります。

ドローンの普及に合わせて、いろいろな変化が出てきています。合法的にドローンにSIMカードを搭載できるようになり、ドローンの遠隔操作が可能になりはじめています。
ドローンが多く飛び交うようになるとドローンの航空管制が必要になってきます。政府は2018年に無人エリアで、2020年のオリンピックまで有人エリアでドローン航空管制システムを作ろうとしています。こういった動きに合わせて災害時にみんながドローンを活用できるように協力していきたいと考えています。
このように人の足やドローン、そしてウェブ上にある様々な情報を世界中の人たちが協力してオープンストリートマップを充実させたり、クライシスマッピングに参加したりと地図を中心とした取り組みが広がりはじめています。
地図情報を使った災害支援は一過性な取り組みで終わらせず、継続できることが非常に重要です。子どもたちに防災ドローンを体験してもらうなど今後も様々なイベントに参加して防災教育、防災活動の普及に努めていきます。
■前編はこちら
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2373
(了)
未来のレジリエンス・テクノロジーの他の記事
- ドローンを組織の災害対策に生かせ!災害ドローン救援隊「DRONE BIRD」【後編】
- 地図の未来、ドローンの未来。ドローンを組織の災害対策に生かせ!【前編】
- 組織の垣根を取り払え!SIP4Dが熊本地震で活躍 eコミュニティ・プラットフォーム【後編】
- 地域住民と行政の情報を一体に!eコミュニティ・プラットフォーム【前編】
- 2020年には約11.8~13.5兆円に。急成長する国土強靱化ビジネス
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方