浸水したWECのプレカット機械

長野県は千曲川が決壊した長野市を中心に、大きな被害が発生した。そんな中でも被災者の住宅再建のために立ち上がった企業の動きを追う。

長野市に本部を置き、地域材加工を行う、北信地域材加工事業協同組合(WEC、峯村宗次理事長)の敷地は1メートル以上浸水。プレカット工場では既存受注の構造材など約20~30棟分が被害を受け、加工機械が損壊した。修理の見通しが立たないことから、新たな機械に入れ替える。

ただし受注物件のCADデータが生きていることに加え、提携工場とのネットワークにより代替加工が可能。当面は5工場に受注を振り分け、営業を再開する。「工期が厳しい物件を優先しつつ、極力迷惑をかけないかたちで納期シフトを依頼し対応する」と峯村理事長。来年からの本格再稼働を目指す。

富国生命の外装材加工場も被災した

同じ敷地内では富国物産(林隆夫社長)の外装部も被災。住宅用窯業系サイディングのプレカット工場が1メートル以上浸水し、工場内に15センチほど泥がたまった。21日までに泥出し作業をほぼ終了したが、加工機械の再稼働は見通しが立たない状況だ。

加工済みのサイディング(外壁材)4~5棟分も流出。直前まで繁忙が続いていたが、新規受注をすべてストップした。既受注分については「現場の手加工に切り替えてもらって対応する」と金井敏寛外装部長はいう。

今後は加工機械の損傷状況を、修復・交換の可能性を含めて調査。「プレカットのメリットが認知され普及してきた矢先だけに残念」(同)としながらも、大型物件は同社が事務局を務めるサイディングプレカット協会の会員工場を通じて代替加工することも検討している。

同じく長野市では住宅建築の丸二林産(大日方俊彦社長)の事務所が約80センチ浸水。同社は被災翌日の14日から復旧作業をはじめ、応急的な措置を終えたことから、周辺の被災家屋を含めた顧客支援の体制に入った。自社OB顧客だけでなく、出入りの大工・工務店がいない家主からも点検・修理の相談が寄せられているという。

21日からは、専任担当者が被災地で住宅相談の受付を開始。大日方社長は「時間はかかるかもしれないが、必ず復興できる。被災した方々に元気をもっていただくには、まず我々が立ち上がらなければならない」と力を込める。

(了)