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■初めての人も聞き飽きた人も

 

防災やBCP(事業継続計画)に関心のある人もない人も、あるいはBCPの策定に挫折してもう懲り懲りだと思っている人も、ひとまず作っておくにこしたことはない安心・安全のための手順書についてこれからお話ししたいと思います。その手順書とは「緊急対応プラン」(Emergency Response Plan、略してERP)のことです。

緊急対応プラン。みなさんはこの言葉にどんな印象を抱くでしょう? 防災や危機管理に慣れ親しんだ人なら「なんだかねえ、ありふれた名前だねえ…」と思うでしょうね。そこには何らフレッシュな響きはなく、すでに何度も観たB級映画のDVDを手にしたときのような印象でしょうか。あるいはまた、会社からBCPの策定を命じられて気が重くなっている方なら、「BCPだけでも頭が痛いのに、これに加えてERPとやらも? カンベンしてほしいなあ!」という気分でしょう。

なにぶん未知のモノやコトに直面すると、訳もなく不安をいだいて困難なものと決めつけたり、あるいは逆にどうせ大したものではあるまいと見下したりしてしまうのが人情。しかしもしそうなら、その人情を好奇心に変換して、この際ERPの正体をしっかり見極めておくというのも一つの手です。ERPがどんな成り立ちでどんな特徴があるのか、作るのは難しいのか簡単なのか、緊急時に本当に役立つのか…。疑問は多々あるでしょうが、ひとまず以下ではERPの簡単な横顔をご紹介しましょう。

■ERPの目的と用途

冒頭で述べたように、ERPはどんな会社も、何がともあれ作っておくにこしたことはない安心と安全のための手順書です。「作っておくにこしたことはない」なんて、あまり説得性のない言い方ですが、次のERPの目的を見ればその重要性は一目瞭然です。

・命を守り、被害の拡大を防ぐこと
・速やかに事態を終息(または業務の継続および復旧フェーズに移行)させること


早い話が、危機的な事態をすばやく察知し、自分の身の安全をはかり、隣人を助け、いち早く逃げのびる。中核メンバーが速やかに参集し、だれの指図を受けずとも自主的にテキパキと情報を収集し、リーダーに報告し、意思決定につなげる。これです。

ERPにもいろいろなタイプがあります。最も基本的で災害の種類を問わない「避難計画」もERPの一つと見てよいでしょう。特定の災害を想定したものとしては「災害別ERP」があります。火災、地震、台風、サイバー攻撃、パンデミックなど、必要なものはどしどし策定してください。

なお、ERPという用語は他の分野・意味にも使われています。企業内のさまざまな経営資源を企業全体で最適に配置・分配し統合的に管理するためのシステムがそれで、ERPパッケージと呼ばれています。もちろん緊急対応プランのERPとは何の関係もありません。お間違いなく!