財政破たんしたデトロイト市消防局は、備品を自分たちで修理。ダラスでは市民から物資を集う「里親制度」も


2013年7月、「モーター・シティ」として知られる米国デトロイト市が連邦破産法9条の適用を申請し、事実上の財政破綻(はたん)となりました。

負債総額は180億ドル(約2兆円)を超え、米国自治体の破綻としては過去最大でした。

2013年末に市は裁判所に再建計画を示し、年金を含めた職員の待遇の見直しや、市が所有する土地・空港、美術品(デトロイト美術館の収集品等)などの資産の洗い出しを行い、公務員給与では、特に教師、消防士、警察官の給与を大幅にカットしました。

人口も大幅に減り税収の落ち込みとともに公務員も減ったため、公共サービスの低下も著しく、街灯の4割が消え公園の7割が閉鎖されたままという状態。また警察官の人員削減で犯罪率も上昇し、廃墟にホームレスが住むことでたき火による火災が増えました。十分に栄養をとれない人たちが健康を害して危篤状態に陥り頻繁に救急車を要請するなど、デトロイト市は「全米で最も危険な都市」といわれるまでになってしまいました。

このビデオをご覧ください。財政破綻後のデトロイト市消防局は老朽化した消防装備を完全に使えなくなるまで自分たちで修理しているのがわかります。

このようにデトロイト市消防局の財政破綻による現状を知った、同じテキサス州内のダラス市消防局では、「自分たちの消防署に必要な備品などは、新品の必要はなく、寄付やリサイクル品で十分」と判断し、ダラス市消防局ホームページに備品の寄付公募ページを作りました。

その活動のスローガンは「ようこそ、消防署の里親プログラムへ」というもので、たとえば現金や物品、改装・改築など、地域住民はもちろん世界中の誰でもがダラス消防局に寄付できるフォームを作りました。

①まず、里親申請書にどのような里親を希望するかを記入
http://www.dallasfirerescue.com/pdf/adoptAStation_donorForm.pdf

②各消防署所で何が必要かをリクエスト
http://www.dallasfirerescue.com/pdf/fire-station-needs.pdf

例としてはキッチンの椅子、カーペットの交換、バーベキューグリル、体力トレーニングマシンなど。また、署内の改修費用や設計費用までを寄付で賄っています。

■ダラス市消防局里親制度
http://www.dallasfirerescue.com/adoptAStation.html

里親として寄付した方や企業は、ダラス市消防局が寄付の対価を算定してレシートを発行。寄付した分は税金の控除対象になります。

また、市のイベントで感謝状が贈られたり、ホームページに寄付者のリストとして会社ホームページへのダイレクトリンクも行っています。

アメリカのいくつかの消防局では、救急車を有料化するために、消防局内で救急業務を第3セクター化し、民営化することで有料化を実現しています。また、消防局自体を民営化することも考えられています。

いかがでしたか?

これから、「人口が減り続ける日本の経済がどのように変化するのか」についてはおおよそ予測がついていますが、みなさんの消防局では深刻化する自治体の予算の削減にどのような対策が取られていますでしょうか?

何事もそうですが、今までのことよりもこれからのことをもっと具体的に議論し、プロジェクトごとに専門家のアドバイスをフレキシブルに受け入れながら、きちんと将来を見据えた対策を整えておくことが重要だと思います。

怖いのは、財政破綻するまで何も努力しないことだと思います。とにかくアイデアを出し合って、やってみること。もしダメだったら次の作戦、また次の作戦と安定するまで、最低コストで最大の収益を生むことに挑戦し続けることが生き延びる秘訣かもしれません。

もし、海外の消防署への視察、研修、調査、搭乗出動体験などにご興味がある方は、お気軽にご連絡ください。過去20年間、34カ国の消防局で海外派遣消防研修の通訳、コーディネートを行ってきましたので、自信と責任を持ってサポートさせていただきます。


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp

(了)