被災建物予測棟数・被災率の表示イメージ(資料提供は全てエーオンベンフィールドジャパン)

あいおいニッセイ同和損保、横国大と

イギリスに本社を置く再保険ブローカー大手であるエーオン。その日本法人傘下にあるエーオンベンフィールドジャパンはあいおいニッセイ同和損害保険、横浜国立大学と産学共同研究を実施。その成果として、災害発生時の被災建物予測棟数を市区町村ごとに1時間単位更新によりリアルタイムで公開するサイト「cmap.dev(シーマップ)」を開設した。世界でも前例がないというこの試みについて、同社再保険部門の工学博士である岡崎豪氏に話を聞いた。

写真を拡大 「シーマップ」の仕組み。データを基に過去の保険金支払いデータも使い分析

シーマップでは台風、豪雨、地震による被害が発生した際に、直後から建物被災棟数や被災率を市区町村ごとに予測し、地図上に表示を行う。また、このシステムは幾重のデータを基に予測を実施している。気象庁の観測データや国立情報学研究所の現在と過去の震度情報、さらには米国海洋大気庁(NOAA)の現在の風速データと過去の台風データに加え、横国大の持つ1959年の伊勢湾台風のデータも活用されている。現在のみでなく、過去のデータが分析には大きく役立つという。

写真を拡大 日本の建物の屋根の主な形。左にいくほど台風での被害が大きい

これら基礎データを基に、分析用サーバーで被害予測を行うが、この際には建物データベースと過去の保険金支払いデータが使われる。過去の保険金支払いデータはあいおいニッセイ同和損保が提供する。建物データベースは精度向上のため、日本中全ての建物に相当する約5000万棟の航空写真を取得した。「台風により最も被害が発生しやすい部位は屋根であるため、屋根の情報が欲しかった」と岡崎氏は語る。日本の屋根は主に5分類。まっ平らな陸屋根が最も被害が少なく、日本瓦を用いた複雑な屋根形状である入母屋屋根は最も被害が大きい。この屋根の形状を個別に把握することがこれまで難しかったが、航空写真にディープラーニングを適用して画像を判別、屋根の形状を把握することで被害予測の精度が向上した。