「保険」「機材」「避難」で水害に備え
被災後は「あわてない」「写真を撮る」「支援制度を調べる」
木村 悟隆
(きむら・のりたか)専門は化学(高分子材料)、いわゆるプラスチックだが、2004 年の新潟県中越地震から、仮設住宅の居住性の調査や、被災者支援にも関わっている。著書に「地震被災建物修復の道しるべ」(共著)など。
2019/07/08
被災を前提にした災害への備え
木村 悟隆
(きむら・のりたか)専門は化学(高分子材料)、いわゆるプラスチックだが、2004 年の新潟県中越地震から、仮設住宅の居住性の調査や、被災者支援にも関わっている。著書に「地震被災建物修復の道しるべ」(共著)など。
間もなく西日本豪雨から1年。この記事を書いている今、やはり梅雨前線で九州南部に大雨が降り続いています。また、梅雨が明けても台風に急なゲリラ豪雨。秋まで注意が必要です。ここでは、水害への備えと、万一水害に遭ってしまった場合の個人の住まいの復旧について述べたいと思います。
火災保険(それに準ずる共済)には多くの方が加入していると思います。水災の保険に加入しているでしょうか? 床上浸水すると家の濡れた部材(壁、断熱材など)の交換その他の修理で500万円ぐらいはかかります。また、西日本豪雨の倉敷市真備の2階まで浸水した場合には1000万円以上かかったという話を聞きました。水災で新価契約(保険会社によって名称が異なる)になっていれば、築年数によらず、修理費用は補償されます。戸建・マンションを問わず、未加入の方は必ず加入してください(マンションの上層階は浸水の恐れはないので加入は不要ですが)。
マンションにお住まいの方は、共用部に水災の保険をかけてあるか、確認してください。エレベーター、機械式駐車場、水道の増圧ポンプなど、地上や地下に生活に欠かせない機械・電気設備があります。床下浸水でこうした設備が被災して1000万円を超えるような被害になった事例があります。保険未加入だと修繕積立金を取り崩すしかなくなり、今後の建物の維持に支障が出ます。
■「土のう」が作れなければ「水のう」
共用部にどんな設備があるか知っておくことも大事です。床下浸水で機械部への浸水を防ぐために土のうを建物の入り口に積むのも有効でしょう。ただし、マンションは街中が多く、敷地内もコンクリートで固められているため、土を用意するのが困難です。最近、段ボールとポリ袋を用いた「水のう」が解決策の一つとして推奨されています。倉庫に段ボールとポリ袋を用意しておき、いざという時に組み立てたらどうでしょうか? もちろん、危険な急な増水の場合は、命を守るのが優先です。低層階の方は上層階に避難すること、またそうした避難のあり方について、管理組合などで何らかの取り決めをしておくとよいのではと思います。
■防災用品は想定される災害種類に応じて置く場所を変えて
非常用の防災用品ですが、あれもこれもではなく、最低限必要なものを先ず挙げます。「現金」「クルマ(のカギ)」「スマホ(情報)」は必須でしょう。次いで薬を飲んでいる人は「お薬手帳」。「飲み水」は実は水害では大事です。やむを得ず2階に垂直避難して孤立したとき、水に囲まれているのに飲み水がないのがつらかったと聞きます。水害では2階に置いて下さい。地震なら玄関から逃げるので1階でしょう。想定される災害の種類に応じて置く場所を変える必要があります。岡山県倉敷市真備町の大水害の経験のアンケートを基に作られたチラシがあります。未災地の方には大いに参考になるでしょう。
■床下の水を吸い取るポンプ、掃除機、水分計
自主防災会では、万一水害に遭ったときに備えて、いくつか住宅の復旧用の機材を備えておくとよいでしょう。床下にたまった水を吸い取るポンプ、わずかに残った水を吸い取る掃除機、床下乾燥のためのダクトファン、壁内部の浸水状況が分かる水分率計です。写真に示すポンプは水深1ミリまで吸い取ることができる高性能のものですが、約7万円と個人が備蓄するには高価です。ぜひとも自主防災会で防災倉庫に備蓄することをお勧めします。過去の水害で、町内会がポンプを備蓄していたため、順に使って応急処置が進んだ事例がありました。なお、防災倉庫が被災しないことも大事です。崖から離れて浸水しにくい場所に置くこと、もし適当な場所がない場合は、倉庫に防水性があることが必須です。
【参考】
ツルミポンプ スイープポンプLSP・LSPE型
ケルヒャー 業務用乾湿両用クリーナーNT 55/1 Tact
株式会社 エムケー・サイエンティフィック 水分計 DT-128M (建材用)
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