災害時に被災者は予想外の痛手を受け、精神的なストレス(悲しみ、不安など)を抱えます。阪神・淡路大震災から24年が経ちますが、あの時のことは昨日のことのように覚えています。身近な人を失くしたら、生身をえぐられたような喪失感にさいなまれます。さらに、昔から俗にいわれる大切なものは「衣・食・住」ですが、本当は順番が大違い。「住・食・衣」の順番に早変わりし、最も困るのは「住む家」がなくなることです。これは最大のストレスとなります。次のストレスは生計の不安です。職場が崩れ落ち、明日から働く場所がない、現金収入が途絶えるという苦痛です。最後に暮らしに不可欠な水道、ガス、電気が停止し、これが長引いていつ回復するか見通しが立たない。これも耐え難い苦痛です。さらに、飲食店が閉まり、食料や水が手に入らない。電車やバスも不通。八方ふさがりとはこのことです。頭を抱えて寝込むしかありません。こんなストレス満杯のとき、「食」はどんな役割をするのでしょうか、今回のテーマです。
阪神・淡路大震災の時、避難所(9カ所、270人)で生活する人々に聞き取り調査をした結果は以下のようでした。
食事には、献立、調理法、食べ物の温度の3点が重要
食事は、震災発生前に比べて「まずい、とてもまずい」が47%でした。まずい理由は「同じ食べ物の繰り返し」「食べ物が冷たい」「米飯が固い」「おかずの種類、量が足りない」でした。これでは食べる気がしません。おまけに「飲み物が付いていなかった」が3分の2ありました。しかも「飲み物は冷たかった」が7割でした。普段はどうでしょう? 喫茶店で、もしぬるいコーヒが出てきたら、とても飲む気になりません。取り換えてもらいます。つまり食事には、献立、調理法、食べ物の温度の3点が重要になります。日常と比べて格段に質の悪い食べ物を、被災者は口に合わないために食べ残しました。その結果、栄養が「少し、あるいは大いに偏った」と82%が答えています。
「どんな栄養素がよく取れたと思いますか」という質問に対しては、回答は全体に低調で、でんぷん、脂肪、タンパク質の3つに比べて、ビタミン、ミネラルが取れたという人は少なく問題が浮き彫りになりました(図)。
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