2016/08/24
直言居士-ちょくげんこじ

「TwitterやFacebookなどのSNSがこれだけ社会に浸透している昨今、企業はSNS上のレピュテーションリスクに非常に敏感になっている」と話すのは、検索エンジン対策やSNSの監視業務などを営む株式会社エルテス代表取締役の菅原貴弘氏。クライアントの多くは飲食業や食品メーカーなどだが、近年は業種を問わずさまざまな企業から引き合いがあるという。
「例えば銀行に勤めている方が、お子さんに『今日、芸能人が来店した』と話すと、それがすぐにSNSで拡散してしまう。10年前では問題にならなかったことが、今では大きなリスクに発展する可能性がある」とする。
同社ではSNS上の投稿などのビックデータを監視し、企業にとって問題に発展しそうな投稿を検知。最終的には専門のスタッフがリスクを評価し、企業の担当者に対策を促すことで炎上を防ぐ。人がSNSに投稿するのは主に業務時間外の深夜や土日祝日が多いため、担当役員に深夜連絡することもあるという。そのようなときに、誤りがあっては許されない。「必ず人がリスクを評価することが、信頼につながっている」と話す。
SNS対応などで注意しなければいけない点は、これまで企業としては法的に安全とされていたことが、投稿が拡散することで瞬く間にリスクに発展する点だ。例えば2014年に発生した大手食品会社のカップ麺における異物混入事件では、当初は投稿を顧問弁護士に相談し、会社として違法性がないと判断したため対応が遅れたのではと指摘する。
「結果としてその会社は工場を一時閉鎖するなど迅速な対応をとり、レピュテーション(風評)を上げることができた。法的リスクと風評リスクのバランスをとることが、SNS時代には重要だ」(菅原氏)。さらに同社は今年2月から、従業員のパソコン使用時のログデータを解析し、重要顧客データの情報漏えいなど、内部リスクを予兆する内部不正検知サービス「インターナルリスク・インテリジェンス」の提供を開始した。社内のビッグデータを解析し、顧客データの大量コピーなど不自然な行動を行っている社員を検知し、企業に通報する。ビックデータ解析とリスク評価に長けた同社ならではのサービスと言えるだろう。
エルテスがこれから目指すのは、ビッグデータ解析による、より大きなリスクの回避だ。例えば米国では現在、入国ビザ発給の審査においてSNSへの投稿内容を確認しているという。菅原氏は「2020年には東京オリンピックが開催される。現在さまざまなハードウェアによるセキュリティが開発されているが、ビッグデータを解析して危険人物を特定できるようになれば、厳重なハードウェア対策は不要になる」と、リスク対策におけるビッグデータ活用の重要性について訴えている。
(了)
- keyword
- 直言居士-ちょくげんこじ
直言居士-ちょくげんこじの他の記事
おすすめ記事
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方