2016/05/24
おかしくないか? 日本の防災対策
これまで、多くの企業の震災対策訓練は、「地震発生⇒火災発生⇒初期消火⇒建物外への避難」が多かったと思います。しかし、建物倒壊や火災発生がなければ、建物内に留まり「むやみに移動しない」ことが、震災時の原則です。このため、「地震発生⇒火災発生の有無の確認⇒建物内に留まる」という一連の流れについて、訓練を実施し、短時間で実施できる体制を整えておくことが重要ですが、そうなっている企業は極めて少ないのではないでしょうか。そこで今号は、震災直後の対応と「情報の共有化と情報トリアージ」について、番外編としてお届けします。なお、次号は「企業よ、無駄な備蓄をするな」です。
編集部注:この記事は「リスク対策.com」本誌2014年7月25日号(Vol.44)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年5月24日)
1 震災直後の対応が、訓練でできたか?
震災発生直後の流れについて訓練(表1)してみると、ほとんどの企業や施設でできませんでした。これは、BCPや対応マニュアルができているところにおいても、同様の結果でした。
できなかった訓練項目とその内容について、表2にまとめましたので参照ください。
震災直後は、停電、通信不通、上下水道の停止、エレベーターの停止、空調・冷暖房の停止、各種システムのダウン、公共交通機関の停止や、主要道路は緊急車両以外の通行禁止などの状況になります。
こうしたことを十分想定し、対応策を検討しておく必要があり、特に初動期の対応については、チェックリストをあらかじめ策定しておくことが重要です。
2 情報はどのようにして把握するか
(1)ラジオからの収集
震災が起きると、必要な情報がなかなか入ってきません。電気が使えない場合、ラジオから地震等の情報を入手することとなりますが、はじめは、通信手段が通じている比較的被害の少ない地域の被害情報であり、次の新たな情報が入らない場合は、同じ情報が繰り返し放送されます。また、被害の大きいところほど情報が入らないものと考え、あらかじめ必要な対策を講じておく必要があります。
(2)建物内にいる従業員等の安否確認
建物内にいる来客者や従業員等の安否を短時間で行うためには、次の事項をあらかじめ定めておくことが重要です。原則として、安否報告はフロア別や室別の安否確認責任者が本部に報告するシステムとします。
①フロア別・室別に、安否確認責任者と不在時の代行者を定めておく
②責任者が大きな声で、一人ひとり声掛けし、返答状況を確認する
③負傷者がいる場合、必要な応急措置を行うとともに、直ちに対策本部へ報告する
④対策本部への報告事項を決めておく
⑤対策本部へ声を出して安否状況を報告し、集計表に記載する(またはメモを貼付する)
⑥フロア別・室別の集計表を用意しておく
- keyword
- おかしくないか日本の防災対策
おかしくないか? 日本の防災対策の他の記事
- 【最終回】震災対策訓練を考える~シナリオなき訓練のススメ~
- 第4回 無駄な備蓄をしないポイント
- 番外編 震災直後の「情報の共有化と情報トリアージ」
- 第3回 企業よ、急いで安否確認をするな
- 第2回 被害想定を信じるな
おすすめ記事
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/25
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方