第2回 貨物自動車運送業におけるBCP
小山 和博
外食業、会計事務所勤務を経て、(株)インターリスク総研にて 2007 ~ 2017年の間、事業継続、危機管理、労働安全衛生、事故防止、組織文化に関するコンサルティングに従事。2017 年よりPwC総合研究所に参画し、引き続き同分野の調査研究、研修、コンサルティングを行っている。
2016/05/19
業種別BCPのあり方
小山 和博
外食業、会計事務所勤務を経て、(株)インターリスク総研にて 2007 ~ 2017年の間、事業継続、危機管理、労働安全衛生、事故防止、組織文化に関するコンサルティングに従事。2017 年よりPwC総合研究所に参画し、引き続き同分野の調査研究、研修、コンサルティングを行っている。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2013年3月25日号(Vol.36)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年5月20日)
日本物流団体連合会が2012年7月に公表した「自然災害時における物流業のBCP作成ガイドライン」国民のは、日々の生活を支える社会インフラとしての物流システムの社会的責任を強調し、物流事業者に事業継続計画(BCP)の策定を勧めている。物流事業といっても様々な事業があるが、日々の暮らしを支える物資を輸送拠点から消費者に届ける「ラストワンマイル」と呼ばれる部分の輸送業務は、主に貨物自動車運送業によって担われている。いまや貨物自動車運送業なくして消費者の生活は成り立たないといっても過言ではない。
一方で、全日本トラック協会「平成22年度トラック輸送産業の現状と課題」によれば、全国に6万社超ある貨物自動車運送事業者の99%は中小企業であり、経営基盤の強化が業界全体の課題として挙げられている。このことは、仮に災害等が発生した場合、素早く事業を再開できなければ収入が途絶し、会社の存続が困難になりかねないことを意味する。
そこで本稿では、貨物自動車運送業の大規模災害における事業継続の対応策を紹介する。
■これだけは教育しておきたい初動対応
貨物自動車運送業では、社員の多くが単独もしくは少数でトラックに乗務しており、災害発生直後は、自分の判断で対応しなければならないという特徴がある。このような業態特性を考慮すると、災害時に会社として適切な対応をとるためには、普段から大規模災害時に備えた教育を行った上で、状況に応じて臨機応変に対応することを推奨することが適切な対応と考える。教育上のポイントとして代表的なものを挙げる。
ポイント1:初動対応は人命最優先が大原則!
先に紹介した日本物流団体連合会「自然災害時における物流業のBCP作成ガイドライン」によれば、東日本大震災においても車や荷物を守ろうとしたため、逃げ遅れて被害にあった事例があると指摘されている。
普段は何より大事な車や荷物であっても、災害時に社員の命と引き換えに守らなければならないというものではないだろう。災害時には、人命最優先が大原則であり、車や荷物はその次に守るものという方針をはっきりさせておくことが望ましい。
ポイント2:初動対応カードで対応方針を明確化!
人命最優先といっても、乗務中の社員がどのタイミングで避難を開始するかについては、各社で悩みがある。無線等を日々使っている事業者であれば、無線により連絡することも可能だが、携帯電話は発災後使用に制約がかかる可能性がある。コンビニチェーンA社では、MCA無線を導入しており、全トラックに配備している。日々の業務の中で、無線による連絡が有効であるのであれば、導入も検討に値する。
また、大規模災害時の対応を統一するためには、災害発生時の避難から安否確認までの望ましい手順を取りまとめた「初動対応カード」等の資料を作成することをお勧めする。例えば「車を置いて避難するときは、鍵はつけたまま、ドアはロックしない」「安全を確保してから事務所に連絡する」などの手順を取りまとめた資料である。「自然災害時における物流業のBCP作成ガイドライン」には、初動対応カードの見本が掲載されており、参考になる。
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