東日本大震災の企業の対応に関する報告書はいくつも作成されています。東京電力福島第一原子力発 電所の事故に関するものが多いですが、電力に並んで社会の重要なインフラである金融関係の報告書も あります。それらは、わが国企業の危機管理について、共通の問題点を浮き彫りにしています。

1.東日本大震災の企業の対応に関する報告書
東日本大震災の企業の対応については、以下のような報告書が出されています。  
東京電力福島第一原子力発電所の事故に関して  
○「東京電力に関する経営・財務調査委員会の報 告書」(23.10.3)  
○「東京電力の福島原子力事故調査報告書 中間 報告書」(23.12.2)  
○「東京電力福島原子力発電所における事故調査 ・ 検証委員会」の中間報告書(23.12.26)  
○「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調) 」 の報告書(24.2.28)  

金融機関の対応に関して  
○日本銀行決済機構局の「東日本大震災における わが国決済システム・金融機関の対応」(23.6.24)  
○みずほ銀行の「システム障害特別調査委員会」 報告書(23.5.20)

日本銀行決済機構局の「東日本大震災におけるわが国決済システム金融機関の対応」は、震災直後、みずほ銀行(MHBK)で発生したシステム障害について記述しています。  

このシステム障害では、MHBK では 15 日(火)指定日分から 23 日(水)の指定日分までの合計約 120 万件の為替電文が未送信となり、また、16 日 (水)指定日分から 18 日(金)指定日分まで合計 約 101 万件の受信為替電文が未処理となったことなどが明らかになっています。3月 19 日∼ 21 日の 3連休に、同行のすべての ATM が停止する事態に至ったことはまだ記憶に新しいのではないでしょうか。

障害の概要については、下記の報告書に詳しく記述されています。

みずほ銀行の「システム障害特別調査委員会」報告書 (23.5.20) より
3 月 11 日(金)に発生した東日本大震災に伴い、特定の義援金口座に対して振込入金処理が集中したことに起 因して、14 日(月)勘定系システムの夜間バッチの処理 件数がリミット値を超えたため異常終了したことに端を発するものである。
(※バッチ処理とは、大量のデータを一定期間ためておき、コンピューターでまとめて処理する作業のことを言います)
MHBK は、上記の夜間バッチの異常終了に対してシス テム復旧処理を実施したものの、当該処理に多くの時間を要したため、実施されるべき一連の夜間バッチが 15日(火)の営業店の開始時刻までに終了しない状況が濃厚になった。そのため、MHBK は、夜間バッチを中断す るとともに営業店端末の開局処理を実施し、一旦中断し た夜間バッチの影響により業務提供が不能となる取引の抑止オペレーションを実行した。しかし、これらの作業には時間を要したため、15 日(火)の営業店業務の取引 開始は遅延した。さらに、営業店端末の開局処理に必要なバッチの日替り処理により、通常自動化されているシステム運行が手動に切り替わったために、当日中に中断した夜間バッチを終了できず、終了後に予定していた為替の送信ができなかった。  
16 日(水)朝、14 日(月)分の夜間バッチが終了し、15 日(火)分の夜間バッチを開始したが、14 日(月) の義援金口座とは別の口座において、14 日(月)と同様 の振込入金処理の集中が発生し、16 日(水)早朝に再び夜間バッチが異常終了した。この後、前日同様に取引抑止オペレーションを実行する必要があったことに加え、 ATM の障害への対応が生じたため、16 日(水)の営業店業務の取引開始も遅延した。以後、夜間バッチの未処 理が蓄積するとともに、手動によるシステム運用に起因する人為的ミスも多発し影響範囲が拡大していった。