南海トラフ地震のメカニズムと予測を知る

第2回リスクアドバイザー情報交換会 3月21日

東京大学地震研究所教授
加藤尚之氏

「南海トラフ地震の対応を考える」をテーマに開催した第2回リスクアドバイザー情報交換会。東京大学地震研究所教授の加藤尚之氏による講演

「巨大地震警戒」は半割れのケースを想定

第2回リスクアドバイザー情報交換会は3月21日、東京・市ヶ谷で「南海トラフ地震の対応を考える」をテーマに開催。南海トラフ地震臨時情報対応計画の見直しについてワークショップを行ったほか、特別講演として東京大学地震研究所教授の加藤尚之氏が南海トラフ地震のメカニズムと予測の意味を解説した。

加藤氏は「地震はプレートの運動」という学説を紹介。地球表面を構成する複数のプレート(固い岩盤)が別々の方向に動いているため境目でズレが生じて起きるプレート境界地震、海側から押されている陸側のプレートに歪みが生じて起きるプレート内地震のメカニズムを解説し「理論として確立されているが、細かい部分はわかっていないところもある」と話した。

日本列島周辺では太平洋プレートとフィリピン海プレートが陸側のプレートに沈み込んでいるが、これら二つの沈み込みによる地震活動には違いがあると解説。「太平洋プレートのほうは普段から地震活動が活発。これに対しフィリピン海プレートは地震活動が比較的少なく、駿河湾から四国にかけてはプレートの固着がしっかりしているためなかなか壊れない特徴がある」と述べた。

会場参加者によるワークショップも行った

地震の予測については、例えば30 年以内の発生確率のような長期予測と、南海トラフ地震臨時情報のような短い時間スケールでの短期予測があると説明。また緊急地震速報は「地震動」の即時予測で、現在は地下の断層運動を「地震」、地面の揺れを「地震動」と、分けてとらえることが多いと解説した。ほか、いつどこでどのくらいの規模の地震が起きるという地震予知は「実用化されていない」とした。

長期予測はさまざまな計算モデルがあるとし、例えば過去の歴史記録や活断層、津波堆積物などから地震の発生間隔の平均を調べるものや、プレート境界にかかる力の時間変化を調べるものなどを紹介。「どういうモデルを使うか、あるいはどういうデータを扱うかで評価が変わる」としたうえで「ただし、いま固着している陸側のプレートとフィリピン海プレートが、いずれ開放されて南海トラフ巨大地震が起きることは確実」と語った。

短期予測では、南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」の意味について「想定震源域内のプレート境界においてM7以上の地震が起きた場合というのは、力のかかり方が変わることで周囲の地震確率が高まるということ」と説明。また、同じくM8以上が起きた場合の「巨大地震警戒」については「東側が壊れたあと西側が壊れた昭和東南海地震、南海地震のケースを想定している」と述べた。

「リスクアドバイザー」についてはこちらをご参照ください。