事故翌日から、ホームページで、電話やネットが使用できなくなっていることを発信した

テザリング使えず、長期化を見据えポケットWi-Fiを手配

埼玉県八潮市で発生した陥没事故現場から北東へ約300メートルの場所に本社を構える、株式会社ワイ・エム・エス(八潮市二丁目)の八島哲也社長は、1月28日午前10時頃、突然インターネットが切断されたことに気づいた。

当初は事故のことを露知らず、保守会社に問い合わせようとしたが電話も不通。携帯電話で保守会社に連絡して初めて、同様の問い合わせが相次いでいることを知った。陥没事故の発生を知ったのはSNSや昼のニュース。「おそらく市からは何の放送や連絡もなかったと思います」と八島氏は振り返る。

テレビで映し出された陥没現場の映像を見て、思い浮かべたのは2016年11月に福岡市内で起きた陥没事故だった。知人からインフラ復旧にかなり時間がかかったと聞いたことを思い出した。

同社は社員6人の中小企業で、特殊照明を製造する。製品はほとんどがオーダーメイドのため、顧客との連絡はまさに生命線。通信が途絶すると顧客の信頼を損ないかねない。まずテザリングを試みたが、市内の利用者が多いせいなのか通信速度が極端に遅く、ほとんど使えない状況だったという。電話対応などを行う事務職員は、コロナ禍でも在宅勤務は行わず工場で作業してもらってきたが、今回は急きょ在宅勤務に切り替え、ポケットWi-Fiを手配して長期化に備えた。同時に、取引先にも状況を伝えた。まず、自社ホームページに「電話やインターネットが事故の影響でつながりにくい状況にある」と掲載。SNSでも顧客に対して今の状況を発信し続けた。さらに、ネットが使えなくなりインターネットバンキングができなくなった関係で支払いが遅れるかもしれない旨を協力会社に伝えたという。

株式会社ワイ・エム・エスの八島哲也社長。自社で製作した特殊照明がオフィスを飾る

ポケットWi-Fiが到着したのは3日後の2月1日。しかし、この時点でインターネットはすでに復旧済みで、結局使用せずに返却となった。通常であればキャンセル料がかかるところだが、事故対応のためか送料だけで済んだという。