陥没現場で続く、救助作業(2月5日 埼玉県・八潮市)

2月5日、発生から8日目を迎えた埼玉県八潮市の陥没現場周辺は、先端を破砕用に付け替えたショベルカーからのごう音が響いていた。近隣の細い水路では作業員が水に浸かり、ホースが通す作業を行う。陥没地点から南東方向に広がる、金属や機械工業などの工場エリアで被害を聞いた。

複数の重機が稼働し、ダンプが待機する(2月5日 埼玉県・八潮市)

「1月28日から電話、FAX、インターネット回線が全て不通になった。会社の電話が全くつながらないと、お客から連絡が(携帯電話に)入った」と話すのは、早潮金属社長の関考治さんだ。顧客との連絡は、携帯電話で全て対応。回線が復旧したのは2月1日朝、陥没発生から4日後のことだった。

最大の被害は、炉の燃料である都市ガスの停止だった。同社は鋼材のロールを薄く伸ばし、顧客の求める厚さと硬さの帯鋼を製造。帯鋼は自動車部品の製造などに用いられている。炉による加熱は不回避な工程で、同社の技術力が集約される場でもある。

被害を語る早潮金属社長の関考治さん

都市ガスの停止から1、2日後に復旧の目処を問い合わせたところ、不明との回答だった。事業継続のため、その段階でプロパンガスへの切り替えを決断した。プロパンガス業者に依頼し、2月4日に設備工事は完了した。しかし、炉を加熱するプロパンガス用のバーナーの納品には1カ月が必要だった。

幸いにも、都市ガスは陥没発生から3日後の1月31日に復旧。炉は、2月4日に都市ガスでの加熱を再開させた。「3日ほどで都市ガスが回復しなかったら、お客に大迷惑がかった。うちにしかできない仕事がある」と関さんは語る。

一週間、炉が使えなかった事業への影響は限定的。都市ガスが停止したのは、炉に入っていた帯鋼が冷却中のタイミングで、熱を加えていなかったのも幸運だった。加熱中にガスが停止すると全てが台無しになった。お客への納品に影響はないという。しかし、プロパンガスへの切り替え対応に300万円ほどを費やした。

同社が想定する最大のリスクは停電だ。機械や設備の全てがストップする。しかし、年間の売上げが17、8億円ほどの同社にとって、強固な対策を実施することは難しい。「停電の場合は、お客さんに謝るしかない」と話す。
陥没した場所は関さんの通勤経路でもあった。「早い時間に発生していたら巻き込まれたかもしれない」と明かした。