2024/12/26
防災・危機管理ニュース
顧客による従業員への著しい迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題化する中、政府は企業にカスハラ対策を義務付ける方針を決めた。従業員を守るため、企業はどのような対策を取るべきか専門家に聞いた。
◇多様なカスハラ、実例即し対策を=桐生正幸・東洋大教授
―カスハラ対応宣言する企業は増えている。
2022年に厚生労働省が対応マニュアルを公表し、ようやく企業も本気になったのではないか。ただ、宣言を出したからといってカスハラが減るわけではないし、「毅然(きぜん)とした対応」と言われても、何をどう対応したらいいか分からなければ現場にとっては意味がない。従業員がきちんと行動できる具体的なマニュアルを作ることが重要だ。
―どのようなマニュアルが望ましいか。
「30分以上説明しても駄目だったら、それ以上はカスハラ」といった基準を定め、該当すれば「個人で対応せず、上司に言う」といった組織的な対応の手順を示すことで従業員は安心して働くことができる。
―基準はどのように定めるべきか。
まずはアンケートを行い、過去にどのようなカスハラがあり、誰がどう対応し、どのような結果をもたらし、どれだけストレスを受けたか実態を調べることを勧める。過去事例を全て抽出・分析し、マニュアルに落とし込んでいく。
◇相談増加、企業はマニュアル整備を=香川希理・弁護士、香川総合法律事務所代表
―カスハラに関する相談状況は。
非常に増えている。カスハラという言葉がコロナ禍の少し前から普及してきて、ここ1、2年くらい、相談が爆発的に増えてきた。
―東京都で条例が成立し国も法整備を進める。
これまでも裁判で企業の従業員に対する安全配慮義務違反が問題になることはあったが、条例化などにより義務違反のリスクがいっそう高まる。東京都条例にはカスハラ防止の努力義務が定められており、カスハラで精神疾患を患った従業員が企業を訴える際の根拠として用いられるだろう。義務違反かどうかの判断では、企業がやるべき対策を実施していたかが基準となる。
―具体的にはどのような対策が必要か。
企業としてカスハラにどう対応していくかを考え、基本方針やマニュアルを策定すべきだ。問題が起きたときに、誰にどう相談すればいいかが分かるよう、相談窓口や手順を整備する必要がある。社内研修も実施すべきだ。マニュアルの内容については新たに発生した事例を踏まえて修正していくことも重要だ。
〔写真説明〕桐生正幸 東洋大教授(本人提供)
〔写真説明〕香川希理 香川総合法律事務所代表・弁護士(本人提供)
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方