1月に発生した能登半島地震。復旧・復興のさなか、9月には大雨が襲い、被災地は甚大な被害を受けた。能登での反省を踏まえ、防災対策強化の必要性では与野党が一致。各党は「防災庁」創設や首都機能分散、避難所環境の改善などを公約に掲げた。
 ◇「防災庁」問われる実効性
 「防災省」創設が持論の石破茂首相。自民党は当面の目標として、「防災庁」の設置を公約に掲げる。現在の内閣府防災部門の司令塔機能を強化し、人員や予算の大幅な拡充を目指すとし、公明党も同調。社民党なども防災省設置を公約に盛り込んだ。
 防災専門の新組織を巡っては「屋上屋を架すことになる」との慎重意見もあり、何度も立ち消えになってきた。省庁間の役割分担や人員、予算の確保策といった課題がある中、実効性が問われるが、選挙戦では論戦に至っていない。
 一方、事前防災の取り組みの柱となっている国土強靱(きょうじん)化もテーマだ。2011年の東日本大震災発生を受け、政府は事前防災を重視。大規模災害から迅速に復興できるよう、公共インフラの老朽化対策などを進めてきた。
 岸田前政権下では、事業規模を15兆円程度と定めた「5カ年加速化対策」(21~25年度)を展開している。自民は次期計画を「早急に策定する」と公約に明記。公明は、次期計画では5年間で20兆円規模を確保するよう政府に求めるなど、さらに踏み込んだ。
 立憲民主党は、首都直下地震に備え、首都機能分散を主張。建物の耐震化に加え、老朽化が深刻なインフラの長寿命化に取り組むとした。国民民主党も公共インフラの円滑な維持管理などを掲げる。日本維新の会は、西日本の大規模災害に対応できる「大阪消防庁」を設け、迅速な対応が可能な体制整備を提唱する。
 災害後の対応策では自民や公明、共産党が避難所の環境改善を主張。災害関連死ゼロを実現するため、トイレ、キッチン、ベッドなどの生活必需品の速やかな配備を唱える。
 ◇国民を巻き込んだ議論を
 各党が防災対策を重視する点では同じだが、国民の行動を促す公約は乏しい。名古屋大の福和伸夫名誉教授(地震工学)は「人口減少と高齢化で、災害発生時の支援者は減り要支援者が増える。被害を抑えるには国民を巻き込んだ議論が必須だ」と指摘。大規模災害を見据え、国としての取り組み強化だけでなく、国民に事前の備えを促す政策も求められる。 
〔写真説明〕元日の能登半島地震と9月の豪雨災害の爪痕が残る大谷地区=11日、石川県珠洲市

(ニュース提供元:時事通信社)