【カイロ時事】イスラエル軍は20日夜から21日未明にかけて、レバノン国内の金融機関の関連施設数十カ所を空爆した。イスラエル軍が21日、発表した。軍は金融機関について、イスラム教シーア派組織ヒズボラの活動を「資金面で支えていた」と主張。イランの支援を長年にわたり受けてきたヒズボラの資金源を根絶する狙いがある。
 報道によると、金融機関は米政府の制裁対象で、サウジアラビアから「テロ組織」に指定されている。ベイルート南郊を中心にレバノン国内に30以上の「支店」を開設し、イランから多額の送金を受けているとされる。イスラエル軍は声明で、ヒズボラは金融機関に数十億ドル(数千億円)の資金を有し、武器購入や戦闘員の給与に充てていたと説明した。
 イスラエル軍は住民に退避を勧告し、ベイルート南郊だけで十数カ所に空爆を加えた。イスラエルのカッツ外相は「ヒズボラが崩壊するまで攻撃を続ける」とX(旧ツイッター)に投稿した。レバノン南部ではイスラエル軍による国連レバノン暫定軍(UNIFIL)への攻撃も続いており、UNIFILは20日、監視塔が破壊されたと発表した。
 早期の戦闘停止を目指すバイデン米大統領は21日、特使をレバノンに派遣。米ネットメディア「アクシオス」によれば、イスラエルは特使のレバノン入りに先立ち、米側に「停戦条件」を記した文書を提示した。イスラエル側はこの中でレバノン南部や同国領空での軍の活動容認を求めており、米当局者はアクシオスに、レバノン政府が受け入れる可能性は低いと指摘した。
 イスラエルと米国はまた、イランによるイスラエルへの報復攻撃に対する警戒を強めている。ロイター通信によると、オースティン米国防長官は21日、配備を急いでいた米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」がイスラエル国内で「配置に就いた」と述べた。 
〔写真説明〕21日、レバノンの首都ベイルート南郊で、イスラム教シーア派組織ヒズボラに関連する金融機関を標的とした空爆で損壊した建物に集まった人々(AFP時事)
〔写真説明〕20日、対イスラエル国境に近いレバノン南部で、イスラエル軍の空爆後に市街地から立ち上る煙(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)