【エルサレム時事】イスラエル軍は8日、イスラム教シーア派組織ヒズボラ掃討に向けたレバノン地上侵攻に関し、1個師団を追加投入したと発表した。7日から新たにレバノン南西部でも作戦を開始し、侵攻地域を拡大した形だ。イスラエルメディアによると、レバノンに展開する兵力は計4個師団で1万5000人以上に達したとみられる。
 軍は、9月30日に「限定的」と称してレバノン侵攻を開始。ヒズボラの攻撃で避難生活を送るイスラエル北部住民の帰還実現を目指している。
 イスラエル軍報道官は7日、レバノン南部の20以上の町や村の住民に対し、対イスラエル国境から北へ約50キロ離れたアワリ川以北への避難を勧告した。国境の北約30キロのリタニ川以南に「緩衝地帯」を設置する計画とされていたが、避難対象範囲を広げた。軍は同日、レバノン南部で1時間に120以上の標的を攻撃。8日もヒズボラの拠点がある首都ベイルート南郊を空爆した。
 ヒズボラは8日、イスラエル北部の主要都市ハイファに向けてロケット弾を発射したと発表。イスラエル軍によると、ハイファなどで飛翔(ひしょう)体約135発が確認された。大部分が迎撃されたが、落下した破片による負傷者が出たもようだ。
 ヒズボラのナンバー2、カセム師は8日、テレビ演説し、ヒズボラの軍事能力は健在だと主張。「(イスラエル内の)適切な標的を攻撃する」とも述べ、徹底抗戦の構えを崩していない。9月に殺害された最高指導者ナスララ師の後継者は発表しなかった。報道によると、イスラエルのガラント国防相は8日、ナスララ師の後継と目されていたサフィエディン師を先週の空爆で殺害した可能性があるとの見方を示した。
 イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスの奇襲から1年となった7日、ビデオメッセージで、「敵がわれわれの存在や国の安寧を脅かす限り、われわれは戦い続ける」と強調した。一方、ハマス軍事部門も動画を公開し「長期の消耗戦」を継続する考えを示した。 
〔写真説明〕7日、イスラエルの空爆を受けてレバノン南部の村で上がる煙(AFP時事)
〔写真説明〕8日、ベイルート南郊で、イスラエルの空爆を受け破壊された建物(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)