初となる南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」の発表から1週間が経過し、後発地震に備えた呼び掛けは終了した。専門家はこれまでの周知が不十分だったとした上で、自治体などに次の発表に備えた対応の検討を求めた。
 京都大防災研究所の矢守克也教授(防災心理学)は臨時情報について、「避難所を開設するかどうかや、海水浴を中止にするかどうかなど、対応を取るべきか否かの判断がしにくい情報だ」と指摘。「対応に難しさがあるにもかかわらず、発表されるまで多くの人が(臨時情報の)名前すら知らなかった」と周知不足を問題視した。
 その上で、「巨大地震に気を付けつつ、日常生活を可能な限り維持するというバランスをどう取るかは地域によって変わる。自治体などは、次に発表される時までに、念入りな計画を立て、訓練し直す必要がある」と訴えた。
 臨時情報の発表後、気象庁は記者会見を開いたり、観測された地震の回数を公表したりするなどして連日注意を呼び掛けた。
 関西大の林能成教授(地震防災・地震学)は「気象庁は役割を果たしたと思うが、制度づくりを主導した内閣府の存在感がなかった」と指摘。「観測結果を評価する気象庁と防災対応を呼び掛ける内閣府の役割は違う。内閣府の準備は明らかに不足していた」と批判した。
 今回の臨時情報は日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が引き金となったが、林教授は「もし大阪などの都市部に近い紀伊半島などが震源となった場合、社会の混乱はより大きくなる可能性がある」と強調。「別のシナリオも考慮し、次に備えて自治体や個人がそれぞれどう動くかを考え続ける必要がある」と述べた。 
〔写真説明〕南海トラフ巨大地震への注意呼び掛け終了について、内閣府と気象庁が開いた合同記者会見=15日、東京都港区

(ニュース提供元:時事通信社)