2024/08/05
防災・危機管理ニュース
【ニューデリー時事】インドの首都ニューデリー中心部で7月下旬、公務員予備校の地下室に雨水が押し寄せ、自習していた20代の男女3人が溺れ死んだ。地下は自習室としての利用許可を得ていない「違法施設」。インドでは安定した職業として公務員の人気が高く、受験競争が過熱。事故は乱立する予備校に規制が追い付かず、安全性が置き去りになっている実態を浮き彫りにした。
「私たちが求めるのは正義だ」。事故から1週間がたっても、現場となった予備校前で若者が抗議を続けていた。
抗議活動に参加した公務員志望のアマン・バルガバさん(28)は「政府は遺族に十分補償し、このような予備校を規制すべきだ」と訴える。事故が起きた予備校に通うビール・シンさん(26)は「3人と面識はなかったが、同じ旅の仲間だった。(抗議は)将来ここに来る後輩のためでもある」と語った。
事故は7月27日夜に発生。地元報道などによると、約30人が自習していた地下1階に豪雨に伴う雨水が流れ込み、逃げ遅れた21歳と25歳の女性2人、28歳の男性が亡くなった。建物には排水設備がなく、予備校オーナーらが過失致死容疑などで逮捕された。
3人が目指したインド最難関の公務員試験には毎年100万人以上が応募。倍率は1000倍を超える。中でも最上位のインド行政職(IAS)と呼ばれる中央政府などの幹部候補は年180人程度しか採用されない狭き門だ。試験の厳しさを清朝時代まで中国に存在した官吏登用試験「科挙」に例える声もある。
それでも、安定した収入と名誉を得るため毎年多くの若者が試験に挑む。受験熱の高まりに伴い、全国で未登録業者も含め予備校が急増。高額な授業料や教員の質の低さも問題となっている。事故を受け、首都圏政府は管内の全ての予備校の設備の確認や教育の質の確保、料金の是正に乗り出す方針を示した。
〔写真説明〕3人が死亡する事故が起きたインドの公務員予備校=3日、ニューデリー
〔写真説明〕3人が死亡する事故が起きた公務員予備校の前で抗議するインドの人々=7月30日、ニューデリー
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方