2024/07/19
防災・危機管理ニュース
「訪日ラッシュ」の恩恵を宿泊業界は生かし切れていない。政府は19日の観光立国推進閣僚会議で全国の国立公園に高級ホテルを誘致する方針を示し、訪日客を地方にも呼び込もうと躍起だが、接客スタッフの不足は一段と深刻化。帝国データバンクの調査によると、ホテルや旅館の6割が人手不足を訴え、「予約や稼働率を制限しているケースが見受けられる」(担当者)という。これ以上、特需を取りこぼすことがないよう、各社は知恵を絞っている。
来年の大阪・関西万博を前に、関西圏は国内外から訪れる見物客を当て込んだホテル建設が相次ぐ。フロントや清掃などのスタッフ不足に拍車が掛かり、今月末に大阪市内に3軒目を開業するJR西日本ホテルズは「予約客を『戦略的に』制限している」と明かす。宿泊料金を値上げすることで客室稼働率を下げ、ホテル運営と収益を維持している。
外国人が客の約3割を占める神奈川県箱根町の旅館「仙石原ススキの原 一の湯」。運営会社の大野正樹店舗運営本部長は「長く働ける人材が欲しい」と、打ち明ける。夕食やチェックアウト業務など、朝夜の接客を伴う人員の確保は特に難しい。このため、人材の定着につなげようと「接客評価手当制度」を6月に導入した。宿泊客がアンケートで従業員の名前を挙げて評価するたびに500円支給する。
軽井沢プリンスホテルなどを運営する西武・プリンスホテルズワールドワイドをはじめ、賃上げで待遇を改善する動きも広がる。訪日客ビジネスの動向に詳しいみずほリサーチ&テクノロジーズの坂中弥生上席主任エコノミストは、「訪日客の料金を高めに設定し、利益を生み出す宿泊施設が増えるのではないか」とみている。
〔写真説明〕神奈川県箱根町の旅館で宿泊客に飲み物を提供する従業員(一の湯提供)
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- 人手不足
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/25
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方