環境省、災害廃棄物対策のグランドデザイン発表

環境省は3月31日、巨大災害発生時における膨大な災害廃棄物の円滑な処理を目指すグランドデザインの中間とりまとめを発表した。東日本大震災の教訓を踏まえ、発災前の事前準備を強化するなど災害廃棄物を処理するためにあるべき方向性を示した。官民連携の巨大災害廃棄物対策チームの発足や、巨大災害発生時における災害廃棄物対策行動指針の策定なども盛り込んだ。

南海トラフ巨大地震では最大で災害廃棄物が約3億2000トン、津波堆積物は約3000トン発生する―。31日に環境省が発表した内容は、東日本大震災の発生量(災害廃棄物約2000万トン、津波堆積物約1000万トン)と比べ、最大で約16倍の災害廃棄物と約3倍の津波堆積物が発生する結果となった。これは2013年3月に内閣府が試算した2億7800トンをさらに上回る数字。内閣府試算では家屋等の全壊のみを対象にしており、半壊、床上浸水、床下浸水などを対象にしていなかったためだ。首都直下地震は最大で災害廃棄物約1億1000トンが発生すると試算。これでも東日本大震災の5倍にあたる。

グランドデザインはこの試算結果を踏まえ、災害廃棄物を円滑に処理するための処理体制の確保や仮設処理施設、最終処分場の整備などに対し、国や都道府県のみならず民間団体も含めた広域連携を必要とした。

具体的には、全国単位の取り組みとして、地域単位の検討を踏まえた全体的な調整を行った上で、「巨大災害発生時における災害廃棄物対策行動指針」を今年度中に作成する。また、同省を中心とした有識者や民間団体、企業などで構成する「巨大災害廃棄物対策チーム」を速やかに構築し、関係する様々な団体との連携・協力体制の強化を通じて災害廃棄物処理システムの検討を行う。

地域単位の検討項目では、地域ごとの廃棄物発生情報を共有するとともに、地域住民も含めた災害廃棄物に対する意識の醸成を図るために「巨大災害発生時における災害廃棄物対策行動計画」をできるだけ早期に策定する。発生原単位等の精度の向上を図り、地域の実情を踏まえたうえで災害廃棄物等の発生量や既存施設での処理可能量を試算していく。

今後の課題では法令の見直しや人材育成、システム構築を挙げた。法令面では災害発生時における特例基準の設定や、仮設処理施設の設置に係る諸手続きに関する特例措置の検討のほか、新たな財政支援制度を検討する。人材育成では過去の巨大災害において得られた知見のアーカイブスを作成し、情報を積極的に発信するとともに部局間の連携を想定した研修やシンポジウムを開催するなどとしている。