2024/07/16
インタビュー
災害リスクへの対策が後回しになっている
目を向けるべきOT(オペレーショナル テクノロジー)リスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
ーー生産工場や物流などの制御システムが抱えるOTリスクが注目されている。
以前とは違い、昨今の工場などのシステム自体が外部にあるさまざまなプラットフォームとつながるようになった。社内ネットワークとの接続も例外ではない。だからこそ、情報資産を守る情報セキュリティーの重要性が高まり、OTリスクが注目されている。
しかし、目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーだけではない。ランサムウェアの感染ばかりが目立ち対策が求められているが、それゆえに地震のような災害リスクへの対策が後回しになっているのが現状だ。
ーー工場や倉庫などの制御システムを強靭化するには?
OTでレジリエンスの高いシステムというと、稼働率の高いシステムと言い換えられる。この稼働率とは、稼働を続けられる時間である平均故障間隔(MTBF)と故障の復旧にかかる平均復旧時間(MTTR)で決まる。数式で表すと「MTBF÷(MTBF+MTTR)」になる。要するに故障が少なく復旧が早いほど高い稼働率になる。
この稼働率を左右する要因が、可用性と復旧性だ。システムが継続して稼働できる能力が可用性、トラブルやダメージから回復する能力が復旧性である。OTのリスクとは、この可用性と復旧性を低下させるものが該当する。論理的なリスクと物理的なリスクに大別して整理できる。
論理的リスクは、システムや制御プログラムに起因する不具合や情報セキュリティーリスクが代表的なものである。物理的リスクは、製造機器の故障や不具合などが該当する。レジリエンスの高い OTとは、論理的リスクと物理的リスクが低く、安定した稼働を維持できるシステムと言える。
- keyword
- オペレーショナルテクノロジー
- ガートナー
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方