2024/07/05
防災・危機管理ニュース
災害関連死を含め67人が死亡、2人が行方不明となった熊本豪雨は4日、発生から4年を迎えた。球磨川の氾濫で79戸が全壊、3人が亡くなった熊本県球磨村の神瀬地区では昨年2月、国などの緊急治水対策による宅地のかさ上げ工事が始まった。しかし、対策の前提となるダムの完成は10年以上先の予定で、住民からは「再び大雨が降ったら」と不安の声が漏れる。
同地区で生まれ育った多武義広さん(57)の自宅は今年4月に工事が完了。約1.6メートル盛り土した敷地の上で暮らしている。ただ、4年前の豪雨災害では約3メートル浸水。近くの保育園にあった遊具用プールをボート代わりにして救助された。「計算上は問題ないと説明されたが、本当に大丈夫か」と漏らす。
経営する商店と自宅の両方とも被災した男性(53)も「漬かった高さまでかさ上げしてほしかった」と打ち明ける。約3.5メートル浸水した自宅を解体し、妻(46)と高校2年の長男(16)は隣の人吉市に移った。だが、男性は「地元の皆さんに支えられてお店があった」と残って店を続けることを決意。約2.5メートルかさ上げして再建した店で生活する。
国土交通省によると、宅地のかさ上げ高は、地区を囲う輪中堤や上流に建設予定の流水型ダムなどを前提に算定した。このため、全ての工事が完成するまでは4年前と同規模の水害が起きると再び浸水する危険性が残る。
復興が長引き、「工事を待てない」と村外へ移住した人も少なくない。神瀬地区の区長を務める假屋元さん(80)は、「このままではふるさとが寂れてしまう。先行きが不安だ」と話す。
一方、災害前から地区内のまとめ役を担ってきた神照寺の住職岩崎哲秀さん(50)は、地域を離れた人がいつでも戻れるよう、村の集会所などで年数回、交流イベントを開いている。「地域を守るため、集いの場をつくり続けたい」。ふるさとの再生に向け、自らを奮い立たせている。
〔写真説明〕宅地などのかさ上げが進む神瀬地区=6月15日、熊本県球磨村
〔写真説明〕宅地などのかさ上げが進む神瀬地区=6月15日、熊本県球磨村
〔写真説明〕豪雨災害当時の画像と現在の神瀬地区を比較する岩崎哲秀さん=6月15日、熊本県球磨村
(ニュース提供元:時事通信社)
- keyword
- 熊本豪雨
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方