能登半島地震で設置された避難所では、発生から半年たった現在でも和式の仮設トイレが使われている。国土交通省は誰もが快適に使える仮設トイレとして洋式便座を推奨しているが、NPO法人の調査では石川県輪島、七尾両市の避難所では85%が和式だった。高齢者には膝への負担も大きく、避難者からは「我慢して体調が悪化した」との声も上がる。
 調査はNPO法人「日本トイレ研究所」(東京都港区)が2月に実施。輪島、七尾両市の避難所計21カ所で現場確認などを行ったところ、仮設トイレ計91基のうち約85%の77基が和式だった。和式の2割は、簡易便座を取り付けていた。
 珠洲市の坂口守さん(61)が身を寄せる避難所の仮設トイレは今も和式だ。坂口さんは「洋式がある役所や病院まで車で行っている」と打ち明ける。「避難所には他に3家族が残るが、みんな不満を口にする。私自身もトイレを我慢しすぎて体調が悪くなったこともある」と訴える。
 同法人によると、2016年の熊本地震では発生から3時間以内にトイレに行きたくなった人が4割に上ったといい、担当者は「トイレは水や食料より早く必要だ」と強調。能登半島地震ではトイレ設置は早かったが、給水やくみ取り方法などに課題があったという。
 国交省は16年、男女ともに快適に使用できる仮設トイレを「快適トイレ」と名付け、(1)洋式便座(2)水洗機能(3)臭い逆流防止機能―といった標準仕様を規定。建設現場や避難所などでの普及を推進している。同法人の島村允也研究員は「今後の災害では、洋式の仮設トイレ設置がさらに求められるのでは」と話している。 
〔写真説明〕避難所に設置された和式の仮設トイレ=6月25日、石川県珠洲市

(ニュース提供元:時事通信社)