日本経済団体連合会はこのほど、災害時における企業間のBCP/BCM連携強化について初の提言をまとめた。震災など災害時の事業継続において、サプライチェーンを構成する企業間や地域間、業界内での連携を呼びかけるのが狙い。災害時の課題を整理したほか、企業と経済界に求められる取り組みや先進事例を記載し、政府などへの要望を盛り込んだ。

東日本大震災時は、企業のBCPが一定の機能を果たしたものの、サプライチェーンの分断などにより多くの企業の事業に影響が出た。震災以降も単体としての企業や企業グループ内では事業継続について進展がみられるが、異なる資本の企業間の連携などは今後の課題となっている。

提言では、企業間の事業継続計画にあたり考慮とすべき要素として、首都直下型地震、南海トラフ巨大地震などの目下懸念される甚大な自然災害などを挙げたほか、法令・施策面では災害対策基本法の改正(13年6月)、内閣事業継続ガイドラインの改定(同年8月)、国家強靭化政策の進展(同年12月)などに配慮することを求めた。連携強化に向けた課題として、サプライチェーンを構成する企業間の連携、地域内連携、業界内の連携を抽出した。

サプライチェーンは、有事の際に原材料・資材調達先の被災、部品の在庫不足、基幹インフラの被災、燃料の不足などにより事業活動が停滞する恐れがある。また、サプライチェーンを担う中小企業はBCP/BCMの整備が遅れており、自社の生産や販売拠点の分散も限界がある。こうしたことから企業に対しては、ITなどを利用した自社・パートナー情報の見える化による資源配置とチェーンの再設計や、目標の策定および優先して復旧すべき品目の明確化と取引先との共有などを、一方、行政に対しては基幹道路や港湾などインフラの早期復旧、中小企業に対する事業継続計画の策定支援などを求めた。

地域では、有事の際に都市部の商業・業務地区で多数の被災者、帰宅困難者が発生する。臨海工業地区では、津波による大きな被害や工場・事業所などが孤立化する恐れがある。これに対し、提言では企業間と自治体との連携を図るための地域協議会の活用、地区全体での共同訓練の実施のほか、企業間連携による委託代替生産協定や企業と自治体の連携協定の締結を求めた。特に行政に対しては備蓄倉庫や情報伝達設備、自律分散型のエネルギー施設などの整備に対する支援や地域BCPの策定支援を要望した。

業界内では、災害時にエネルギーや運送、通信、食料品など国民生活に不可欠な物資やサービスの供給を途絶えさせないことや、非常時の官民の連携体制の構築と深化が重要とし、業界内の企業間での協力と情報共有のほか、競争に直結しない部品などの標準化の検討、業界としての事業継続ガイドラインの策定、業界としての合同訓練の実施を要望。行政に対しては業界としてのBCP/BCMの策定と共通規格化の推進を求めた。

行政には、そのほかにも横断的な取り組みとしてリスクコミュニケーションの徹底、防災と減災に係る各種規制などの緩和、政府や自治体が有する情報のオープンデータ化の推進、日本の防災技術・ノウハウの国際社会への発信を要望した。

経団連では、企業間連携による事業活動の継続性強化の取り組みを積極的に推進するとともに、今後、経団連の企業行動憲章実行の手引きに、防災・減災への積極的な取り組みを追加するとしている。