水産庁は漁業者の安全を確保するため、ライフジャケットを海上で常時着用するよう訴えている。夏に向け、着用を嫌う漁業者も増えるとみられ、「万が一、海に投げ出されたとき、命を守る効果は明らか」(同庁)と強調している。

 農林水産省によると、全国の漁業就業者数は2022年に約12万3000人と、20年間でほぼ半減。高齢化は顕著で担い手不足が深刻化している。海を熟知しているベテラン漁師が多いが、漁船の事故は毎年、数百件発生している。

 漁業者に限らず、船から海へ転落した場合、ライフジャケット着用の有無が、生死を分けることも少なくない。そこで国は18年、20トン未満の小型船の乗組者に対して着用を義務化。20トン以上の船は船員法によって、以前から着用が義務化されていたため、原則としてすべての漁業者への着用が義務付けられた。

 水産庁によると、漁業協同組合を通じた聞き取りなどによるライフジャケットの着用率は、23年が全国平均で9割以上に達している。ただ、徳島県や兵庫県などで、やや着用率が下がるほか、「近年、実際に海中転落した漁業者の着用率は5割ほど」(同庁)というのが現状だ。

 23年の海上における漁船の人身事故者数は合計252人(海上保安庁調べ)。このうち海中転落者は62人で、半数以上の38人が死亡あるいは行方不明となっており、プレジャーボートなど、他の船舶と比べて圧倒的に多い。

 船上でライフジャケットを脱いでしまうケースもあることから、水産庁は漁業協同組合と連携し、海上で常時着用するよう呼び掛けている。一方、海保では、携帯電話の全地球測位システム(GPS)機能をONにして乗船することや、ストラップ付き防水パックを利用し、通信手段を確保することも重要とPRしている。(了)

ライフジャケットを着て漁船で作業する漁業者ら(全国漁業就業者確保育成センター提供)

 

(ニュース提供元:時事通信社 2024/05/25-04:16)

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