災害救助法の要請により倉敷市で初めて仮設住宅として採用されたトレーラーハウスの設置風景(画像提供:アーキビジョン21)

岡山県倉敷市で全50戸のトレーラーハウス型仮設住宅が提供される。災害救助法の要請による応急仮設住宅としては全国初。8月末までに全50戸の搬入と給排水・電気設備などの接続工事が完了し、9月上旬にも入居可能となる予定。完成品をそのまま輸送・設置で翌日には入居できるため、9月末の入居を目指すプレハブ住宅より約1カ月早い。コストも2年間のレンタル費が1台300万円と従来の建設型より大幅に削減できる。災害後も解体せず次の災害や平時の移動型施設としても再利用できるなど運用上のメリットが多く、入居した被災者の評価が定着すれば、災害時の住宅再建の有力な選択肢になりそうだ。

今回トレーラーハウスの仮設住宅が供給されるのは、岡山県倉敷市真備町地区から数キロメートル離れた同市船穂町柳井原地区にある工業団地の一角敷地6500㎡。一般社団法人 日本RV輸入協会(東京都台東区、原田英世会長)が供給する大型トレーラーハウス(延床約36㎡/2~4人用)10台と、木造住宅メーカーのアーキビジョン21(北海道千歳市、丹野正則社長)が供給するコンテナ型ムービングハウス(延床面積約29㎡/2人用)40台。合計50戸のトレーラーハウス型仮設住宅団地が誕生する。

倉敷市船穂町柳井原地区の仮設住宅団地にて、大型トレーラーハウスの設置風景(画像提供:カンバーランドジャパン)



これまで大規模災害時に供給される応急仮設住宅は、建設型と借り上げ型が主流。建設型は費用が嵩んでおり、東日本大震災では建設費が1戸あたり約613万円~730万円と高額で、建築に1戸3~4週間かかるうえ、建設用地の確保、資材不足、職人不足なども重なり、短期間で大量供給が難しいことが課題となってきた。

借り上げ型は、民間賃貸住宅や公営住宅を借り上げる「みなし仮設」と呼ばれるもの。既存ストックを活用することで迅速に住居を確保できるほか、経費も、家賃、共益費、 敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料を含めても2年間で150万円~200万円程度と、大幅にコスト削減できる。東日本大震災や熊本地震では、いずれも建設型よりも借り上げ型の供給が上回った。一方借上げ型は建設型と比べて被災地から遠く、被災者が孤立化するなどの課題もあった。

トレーラーハウスは、完成品をそのまま牽引車で現地に運び込めば、あとはジャッキで建物の水平を調整したうえで電気・ガス・上下水道を接続するのみ。準備があれば工事は1日で完了でき、大幅に工期短縮できる。

レンタル契約が可能。今回受注した日本RV輸入協会とアーキビジョン21によると、2年間のレンタル費は、大型トレーラーハウスで1台300万円、コンテナ型ムービングハウスで230万円。そのほか輸送・設置・撤去の工費100万円程を加えても、建設型と比べて大幅なコスト削減ができる。自由に移動できるため、復興の進捗に応じてより住みやすい敷地に住居を移転できる。震災後は解体せず、備蓄して今後の大規模災害時に再利用できる。

協会会長の原田氏は、1994年に米国製トレーラーハウスを輸入販売する会社を創業。2006年から2×4工法によって国内で設計・製造・販売する体制を確立した。日本国内では2007年中越沖地震で初めて民間で採用された。転機となったのは東日本大震災。現地で活動する支援団体や個人が事務所・店舗・診療所や宿泊施設として活用した。この実績が認められ、熊本地震では初めて災害救助法の要請により30台が福祉避難所として益城町に供給された。

仮設住宅として災害救助法の要請を受けるのは今回が初めて。原田氏は「阪神淡路大震災以来20年以上提案し続けたことが、ようやく国の供給する仮設住宅に採用されたことは大きな成果」と喜ぶ。

今後の課題は在庫不足。現状では協会会員企業の展示在庫をすべて合わせても50台程度が限界。「自治体などが少しずつ備蓄在庫を持ち、災害直後に全国から1万台程度を即時に被災地に提供できる体制が理想。平時に遊休地に配置しておけば滞在型観光や移住を喚起する宿泊施設として活用できる。自治体や企業の有効な災害備蓄として提案していきたい」(原田氏)。

一般社団法人 日本RV輸入協会会長・原田英世氏


(了)

リスク対策.com:峰田 慎二

※以下2点、修正しました。
・「9月1日から入居が始まる」→「9月上旬にも入居可能となる予定」
・「2年間のレンタル費は」→「今回受注した日本RV輸入協会とアーキビジョン21によると、2年間のレンタル費は」
                    (8月23日(木)17時36分)