2024/04/27
防災・危機管理ニュース
伊豆諸島の鳥島東方海域で海上自衛隊の哨戒ヘリコプター「SH60K」2機が夜間訓練中に墜落し、搭乗員1人が死亡した事故の発生から27日で1週間となった。海自は行方不明の隊員7人と機体の捜索を続けているが、沈んだとみられる現場は海底が深く、難航している。ヘリは実戦に近い高度な訓練をしていたといい、防衛省内からは「難度設定や安全確保に問題がないか検証すべきだ」との指摘もある。
事故は20日夜に発生。フライトレコーダーは回収できたが、他は一部の破片だけ。機体主要部は水深約5500メートルの海底にあるとみられ、海自は探査能力を持つ海洋観測艦を派遣し、27日から海底の調査を始めた。米海軍のP8哨戒機も捜索に加わっている。
艦艇8隻、ヘリ6機が連携して潜水艦を探知する訓練で、関係者によると、3機ずつ交代で追尾したり、上空や水中からの攻撃を想定したりと、実戦さながらの複雑な運用だった。護衛艦部隊トップの護衛艦隊司令官が、部隊の技量を確かめる「査閲」の最中だったことも判明している。
ヘリは海中の音を集めるつり下げ式のソナーや磁気反応を探るMADなどを使い、低空飛行やホバリングを繰り返していた。互いの位置情報を共有し、機体接近を警告する「僚機間リンク」というシステムには接続しておらず、相手からの電子戦攻撃など、リンクが使えないような厳しい想定だった可能性がある。その場合、夜間の衝突防止灯の見張りやレーダーなどで危険を回避するが、機器の異常は確認されておらず、何らかの要因で誤って衝突した可能性が高い。
自衛隊幹部は「近年の訓練は本当に困難な状況を想定しており、失敗から課題を探すこともしばしばだ」と明かす。背景にあるのは中国軍の海洋進出などによる厳しい安全保障環境だ。弾道ミサイル監視や領海警備などの任務増加が、隊員の疲労や訓練不足につながっているとの見方もある。
酒井良海上幕僚長は会見で「訓練と任務は車の両輪だ。査閲は技量の確認が目的で、あえて難度を落とすことはない」と説明。一方、ある防衛省幹部は「作業の複雑さや査閲の重圧がミスを生んだ可能性はある。訓練は必要とはいえ、事故防止は大前提」と話している。
〔写真説明〕海上自衛隊のSH60Kヘリコプター(海自ホームページより)
(ニュース提供元:時事通信社)
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