地図上にマッピングされた避難所(資料提供:サイボウズ)

サイボウズ(東京都中央区、青野慶久社長)の災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から、石川県庁へIT支援を行うよう要請が来たのは能登半島地震発生2日後の1月3日だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。

画像を拡大 支援のベースとなったボランティアセンター支援システム(提供:サイボウズ))

突然の支援依頼

サイボウズの災害支援チームリーダーの柴田哲史氏が内閣府特命担当の自見英子大臣と知り合ったのは、2020年にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号で新型コロナウイルスの集団感染が発生したとき。神奈川県のサポートとして現地対策本部に入り、当時は厚生労働政務官だった自見大臣と顔を合わせていた。

その自見大臣から1月3日に入った要請は、ITを使った石川県庁への支援だった。石川県の西垣淳子副知事に会うように依頼された。このとき柴田氏は、震度5強の揺れに襲われた帰省先の新潟県南魚沼市の実家で、被災情報を収集していたという。

自見大臣から依頼を受けた翌日の4日に石川県庁入りした柴田氏は、西垣副知事と面会。特命を受け、能登半島地震の支援活動を開始した。西垣副知事を中心とした数人のスタッフで相談しながらのスタートだった。その後、県庁の総務部デジタル推進課や同県に防災関連のシステムを納入している企業などが加わったという。

「石川県入りしたときは、孤立集落や避難所がどこにあって、どれくらいの人たちが避難しているのか、まったく把握できていませんでした。本当に被害の大きかった自治体からの情報が入ってきていない状態でした」と柴田氏は振り返る。

最初に取り組んだのは、現地で活動する自衛隊が収集してきた避難所情報の整理。そして政府からプッシュ型支援で届いた物資を避難所の状況に応じて送るシステムの整備だった。

ベースになったのは、同社のクラウド型データベースの「キントーン」を使って開発していた災害ボランティアセンター運営支援システム。このデモを西垣副知事に見せ、すぐにゴーサインが出たという。

自衛隊が空と陸から収集する主な情報は、避難所の場所と状況、そして大まかな避難者数と必要な物資。「当初から、自衛隊は自主避難所や孤立集落を発見するのが任務でした」と柴田氏は語る。

突貫工事でシステムを整備。自衛隊が情報を入力する10台の「iPhone」と20台の「iPad mini」の設定を、半日をかけ柴田氏が1人で行った。