2024/04/10
令和6年能登半島地震
サイボウズ(東京都中央区、青野慶久社長)の災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から、石川県庁へIT支援を行うよう要請が来たのは能登半島地震発生2日後の1月3日だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
突然の支援依頼
サイボウズの災害支援チームリーダーの柴田哲史氏が内閣府特命担当の自見英子大臣と知り合ったのは、2020年にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号で新型コロナウイルスの集団感染が発生したとき。神奈川県のサポートとして現地対策本部に入り、当時は厚生労働政務官だった自見大臣と顔を合わせていた。
その自見大臣から1月3日に入った要請は、ITを使った石川県庁への支援だった。石川県の西垣淳子副知事に会うように依頼された。このとき柴田氏は、震度5強の揺れに襲われた帰省先の新潟県南魚沼市の実家で、被災情報を収集していたという。
自見大臣から依頼を受けた翌日の4日に石川県庁入りした柴田氏は、西垣副知事と面会。特命を受け、能登半島地震の支援活動を開始した。西垣副知事を中心とした数人のスタッフで相談しながらのスタートだった。その後、県庁の総務部デジタル推進課や同県に防災関連のシステムを納入している企業などが加わったという。
「石川県入りしたときは、孤立集落や避難所がどこにあって、どれくらいの人たちが避難しているのか、まったく把握できていませんでした。本当に被害の大きかった自治体からの情報が入ってきていない状態でした」と柴田氏は振り返る。
最初に取り組んだのは、現地で活動する自衛隊が収集してきた避難所情報の整理。そして政府からプッシュ型支援で届いた物資を避難所の状況に応じて送るシステムの整備だった。
ベースになったのは、同社のクラウド型データベースの「キントーン」を使って開発していた災害ボランティアセンター運営支援システム。このデモを西垣副知事に見せ、すぐにゴーサインが出たという。
自衛隊が空と陸から収集する主な情報は、避難所の場所と状況、そして大まかな避難者数と必要な物資。「当初から、自衛隊は自主避難所や孤立集落を発見するのが任務でした」と柴田氏は語る。
突貫工事でシステムを整備。自衛隊が情報を入力する10台の「iPhone」と20台の「iPad mini」の設定を、半日をかけ柴田氏が1人で行った。
- keyword
- サイボウズ
- 能登半島地震
- 情報共有システム
- ボランティアセンター支援システム
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方