目的別ドローンを連携させ、倒壊家屋からの救助訓練を実施

岐阜県岐阜北警察署はこのほど、Starlink(スターリンク)衛星通信とマイクロドローンを含む複数機の目的別ドローンを活用した災害救助訓練を実施した。ドローン販売・点検業務を手がけ、同署と災害協定を結ぶ昭和テックが実施主体となり、ディープテック領域のシステム開発を行うCasley Deep Innovations(キャスレー)や、ドローン設計・開発を手がけるVFRSpicy Drone Kitchenが支援に加わって行われたもの。

同訓練では、大規模地震によって倒壊・半壊等の被害が多数発生し、通信が途絶した不感地帯において倒壊の恐れがあるマンションに住民が取り残された状況を想定。救助隊が通信機器やドローンを含む救助パッケージを迅速展開し、外部から直接アクセスすることが不可能な閉域通信ネットワークを確保した上で、小型ドローンによる上空からの建物の倒壊危険性の診断と、人が立ち入ることが困難な危険な状況下でのマイクロドローンによる屋内捜索を行った。

はじめに、2名の人員が現場到着から約5分で衛星通信を閉域化し、映像通信・本部連携を確立した後にドローンを展開。外観診断とベランダからの要救助者捜索のため、ACSL製の国産ドローン「SOTEN(蒼天)」を飛行させ、建物の外観にひび割れや傾きなどの損傷がないか、またベランダ越しに取り残されている要救助者がいないかをチェック。その結果、3階建ての建物12戸のうち2階と3階の計2戸を特定した。

これにより、ここまでの捜索を人員2名が約10分の飛行で行えることを確認した。また、現場から離れた指揮本部を想定した訓練テントに、ドローンからの映像をリアルタイムに伝送し、災害診断の専門家が遠隔でアドバイス可能であることを確認した。

屋内捜索では、上空から「SOTEN」の誘導支援を受けながら、マイクロドローン「SDK」が屋内に侵入。障害物を回避しながら各部屋を探索し、要救助者が倒れているところを発見した。これにより、マイクロドローンによる捜索を人員2名が約5分×2回の飛行で行えることを確認した。また、「SDK」からの映像のリアルタイム伝送により、本部からの指示による捜索個所の伝達や、現場と本部の連携が可能であることを確認した。

そのほか、AI(人工知能)によるオブジェクト解析により、人体の一部・全部・顔識別が可能であり、パイロットだけでなく、補助者や遠隔地の支援者が映像を見ながら対応できることを確認した。

最終的に、現場到着後、安全な位置を確保して約25分で要救助者2名を発見し、救助の様子を遠く離れた指揮本部・専門家・支援者へリアルタイムに伝送し、救助部隊が連携して救助活動を行えることが実証された。

なお、閉域通信ネットワークの確保にあたっては、Starlinkを用いた衛星通信をキャスレー独自の警察・公共専用閉域技術「furehako Guard(フレハコ・ガード)」でハイパー・セキュア・ネットワーク(秘密通信)化。ドローンからの映像は、ENWAの消防・医療等向け現場映像伝送システム(DiCaster)にキャスレーが警察向け独自機能を追加した「DiCaster Police(ディキャスター・ポリス)」により、閉域通信ネットワークを経由してリアルタイムで伝送され、キャスレーの秘密分散システム「furehako(フレハコ)」の技術を用いて、指揮本部等の遠隔拠点との連携がなされた。