1月4日に「アウトドア義援隊」の第1陣が出発(提供:モンベル)

アウトドア用品メーカーのモンベル(大阪市西区、辰野勇会長)は能登半島地震の発災後、ボランティア組織「アウトドア義援隊」を発足。1月2日から奥能登の小さな避難所や在宅・車中避難の個人をまわり、水・食品、燃料、防寒着・肌着、衛生用品・生活用品などの物資を届けた。

アウトドア義援隊は1995年の阪神・淡路大震災の際、モンベルグループ代表で創業者の辰野勇氏が業界関係者に呼びかけてつくった任意団体。以後、国内外を問わず大きな災害で取引先や仕入先、顧客らに被害が出るたび組織を立ち上げ、物資の提供や援助金の受け付け、隊員たちによる現地の支援活動を行っている。

今回の地震では、羽咋市にある同社の倉庫自体が被害を受け、死者・負傷者こそなかったものの自宅やライフラインの損壊で4割の従業員の出社が困難化。また周辺には取引先や仕入先も多いことから発災後すぐ義援隊を発足、2日には先行隊が珠洲市や輪島市に入った。

珠洲市の小学校で防寒具や衣類、水・食品などを配布(提供:モンベル)

先行隊の情報にもとづき、4日には第1陣として大阪本社から6人の社員ボランティアが物資を積んだワゴン車2台で出発。被災した羽咋市の倉庫を前線基地にすると、そこから片道数時間かけて奥能登に入り、珠洲市や輪島市などで水・食品、燃料など緊急性の高いものから配布を開始した。

輪島市のビニールハウスの避難者に物資を配布(提供:モンベル)

アウトドア義援隊の活動は、主に小さな避難所や高齢者施設、在宅・車中避難の個人を支えるのが主眼。災害初期、自治体施設や大規模な避難所へ届いた救援物資が隅々に行き渡るまでにはタイムラグがあるためで、その間、少人数単位の避難者を中心に手助けする。

「当初はまったく情報がなく、現地で活動する他のボランティア組織などと協力。草の根的に情報を交換し合い、個別の避難場所を見つけてまわった。物資を届けた方からも『誰がどこに避難している』といった情報をそのつど教えてもらった」と、自身も義援隊の活動に参加した同社広報部の大塚孝頼さんは話す。

用品・用具の使い方や衣類・寝袋で暖をとるコツなど、アウトドアの知識も被災者に伝える。また、携帯トイレと目隠しで簡易なトイレスペースを設営するなどの作業もサポート。「高齢者の方が非常に多い。たとえ短い時間でも、話をしたり聞いたりして笑顔が戻ると、我々もホッとした気持ちになる」(同)という。

珠洲市で簡易なトイレスペースの設置をサポート(提供:モンベル)
能登町の集会所の避難者と対話(提供:モンベル)

アウトドア義援隊は1月24日までに被災地へ第4陣を送り、モンベル社員を中心に延べ150人弱が活動。その間、趣旨に賛同する企業から届いた数多くの支援物資も被災地へ運んで配布した。今後は公的支援が進んできたことをふまえ、復旧の状況を見ながら、支援活動の内容を検討していく。