2023/12/18
防災・危機管理ニュース
【カイロ時事】イエメンの親イラン武装組織フーシ派が、紅海南部のイエメン沖で商船への攻撃を続けている。イスラム組織ハマスとの戦闘で、パレスチナ自治区ガザに侵攻するイスラエルへの対抗措置との位置付けで、イスラエルに関連する船を標的にしていると主張。事態沈静化は見通せず、海上運送への影響が懸念されている。
フーシ派は11月19日、日本郵船運航の船舶を拿捕(だほ)した。フーシ派が公開した映像では、ヘリコプターから甲板に降り立った戦闘員が瞬く間に船を制圧。戦闘員は「イスラエルに死を」と叫んだ。
報道によると、船はイエメン西部の港湾都市ホデイダから約60キロの集落サリーフの沖合に停泊したまま。乗組員の安否は不明だ。船ではガザへの連帯を示すイベントが行われ、見物客が訪れる「観光地」になっているという。
米中央軍によると、11月26日にもタンカーが一時拿捕された。今月15日には、フーシ派が発射したドローンとミサイルがリベリア船籍の船2隻に直撃し、火災が発生。攻撃の対象とされた船の中には、イスラエルとの関連が見られないものも含まれているという。
イエメン沖は海上交通の要衝で、安全な航行への懸念が高まる。エジプトのスエズ運河管理当局は17日、先月以降で55隻が紅海ルートを取りやめたと述べた。AFP通信などによると、英石油大手BPやデンマークの海運大手は紅海での運航停止を発表し、ドイツの海運会社も同様の措置を検討している。
エジプトのイラン政策の専門家ムハンマド・ハイリ氏は、フーシ派はイスラエルとハマスの衝突に乗じて世界に力を誇示し、イエメンを統治する主流派だと国際社会に示す狙いがあると指摘。フーシ派の後ろ盾のイランには、緊張を高め「さまざまな交渉の切り札にする」思惑があると語った。
フーシ派は、イスラエルに対してもミサイル攻撃などを行っているが、戦線の拡大を懸念するイスラエルは報復を控えている。だが、フーシ派の活動激化を受け、米国は最近、フーシ派への反撃を検討していると報じられている。
フーシ派は16日、「(紅海での)作戦はガザを支援するためだ」と改めて説明し、イスラエルがガザへの攻撃や封鎖などを続ける限り「敵の船」を標的にすると警告。一方、オマーンの仲介で「国際的な当事者」と協議していると明らかにした。具体的な国名は不明だが、この協議が今後の情勢を左右する可能性がある。
〔写真説明〕イエメンのフーシ派に拿捕(だほ)され、同国やパレスチナの旗が掲揚された日本郵船運航の船舶=11月22日、イエメン西部ホデイダの沖合(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)
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