BCMの専門家や実務者による非営利団体であるBCI(注1)は、2023年10月に「Crisis Management Report 2023」を発表した。これは主にBCIの会員を対象としたアンケート調査を通して、組織における危機管理体制の状況やトレンドを把握しようとするものである。
BCIがこのタイトルの報告書を発表するのは2021年9月に発表された2021年版(注2)以来2度目であり、今回発表された2023年版は下記URLから無償でダウンロードできる(BCI会員でなくても、ページの下の方にある「Register for Free」という部分をクリックして連絡先などを登録すればダウンロードできるようになる)。
https://www.thebci.org/resource/bci-crisis-management-report-2023.html
(PDF 84ページ/約 10.8 MB)
本報告書の構成(目次)は次のようになっている。
- Executive summary (要約)
- Crisis management within organizations (組織における危機管理)
- Collaboration in a crisis (危機におけるコラボレーション)
- Lessons learnt in the pandemic era (パンデミック時代における教訓)
- The role of technology in crisis management (危機管理におけるテクノロジーの役割)
- Looking ahead: investment in crisis management (将来を見据えて:危機管理に関する投資)
- Annex (付録)
2021年版から大幅に構成が変わっており、また調査項目なども全面的に見直されているため、2021年版と2023年版との間で直接的に比較できる箇所は少ない。これは2021年版のための調査が、新型コロナウイルスによるパンデミックへの対応直後に行われたことから、パンデミック対応に関連する設問が多かったためかも知れない。これに比べると2023年版の方は、パンデミック対応よりも一般的な危機管理に関する設問が増えている。
今回も本報告書をナナメ読みした筆者が特に注目したデータを2つ紹介したいと思う。まず図1は何らかの緊急事態対応を実施した後に、事後レビューを実施しているかどうかを尋ねた結果である。設問では「post-incident review」(PIR)または「after action review」(AAR)を実施しているか?という聞き方になっているが、これら2つは同義と考えてよい(注3)。
「常に実施する」が38.7%、「大規模なインシデントに対してのみ実施する」が34.3%となっており、これら2つで7割を超える。なお2021年版では「新型コロナウイルス対応に関する事後レビューを実施したか?」という設問があり、回答者の45.9%が「実施した」、36.2%が「まだ実施していないが実施予定」と回答していた。
本報告書では事後レビューに関連する内容に、実に7ページを割いて説明されている。また、以前に2021年版を紹介したときにも述べたが、危機管理における事後レビューの必要性や重要性については、『リスク対策.com』においても再三にわたって指摘されている(注4)。もし読者の皆様の組織において、緊急事態対応に対する事後レビューの実施が定着していないのであれば、これらを参考にして是非とりいれていただきたいと思う。
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方