写真:アフロ

ビッグモーターの保険金不正請求や、大手損害保険会社のカルテル、電力大手による顧客情報の不正閲覧など、不祥事が後を絶たない。不正の根源はどこにあるのか、なくならない理由は? 危機管理コンサルタントで社会構想大学院大学教授を務める白井邦芳氏(ゼウス・コンサルティング 代表取締役社長)に聞いた。

 

インタビュー:白井邦芳氏 危機管理コンサルタント/社会構想大学院大学教授

プロフィール
早稲田大学卒。AIU危機管理コンサルティング室室長、AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、ACEコンサルティングExecutive Advisorを歴任後、ゼウス・コンサルティング 代表取締役社長。日本リスクマネジメント協会顧問。著書に『ケーススタディ 企業の危機管理コンサルティング』(中央経済社)、『リスクマネジメントの教科書』(東洋経済新報社)など


Q.大手企業の不正が相次いで報じられています。どのように見ていますか?

上場企業だからといって立派なリスク管理体制がとられているわけではない。第三者委員会ドットコムによれば、2014年1月から2018年6月までに発生した上場企業の不祥事事例173件のうち、131件が意図的に行われた不正であることが確認されている。

これら131件の不正の発覚の端緒は、外部の監査法人、税務調査、証券取引等監視委員会等、外部からの指摘を受けた事例が46%で、内部通報の7%、内部監査の9%からの発覚と比べてはるかに大きい数字となっている。欧米企業なら、内部通報や内部監査が30~40%近くに上ると考えられ、この数字を見る限り、日本の多くの企業のガバナンスに懸念があり、自浄能力に問題があると言わざるを得ない。

ビッグモーターやジャニーズ事務所等による企業不祥事でも、「ガバナンスリスク」が改めて注目されているが、いずれのケースにおいても以下のような共通点が見て取れる。

1 コーポレートガバナンスの機能不全とコンプライアンス意識の鈍麻
2 経営陣に盲従し、忖度する歪曲した企業風土と隠蔽体質の醸成
3 現場の声を拾い上げようとする意識の欠如
4 人材の育成不足(教育・研修体制の不備)

このうち、「コーポレートガバナンスの機能不全とコンプライアンス意識の鈍麻」については、「内部統制体制の不備」「適正手続きを無視した業務の頻発」「コンプライアンス意識の鈍麻」などに細分化される。

こうした根深い問題を抱えたことで、結果的に組織的な関与による違法・不適切行為が繰り返し行われていても自浄できずに放置されるといった事態が継続されてきたと考えられる。これらの原因となるものは、社内不活性化に伴うコミュニケーション不足、「誰からも評価される正しいことをしよう」から「会社のため、自分のため、軋轢を生まない行動が社内行動の生きていく基本路線」と変化する企業風土、3Lines of Defense(3線防止)が機能しない内部統制体制の崩壊が導く企業不祥事の温床などが想定される。