危機管理をテーマにした国内最大級の総合見本市「危機管理産業展2023」は10月11日~13日、東京ビッグサイトで開催。「防災・減災」「BCP・事業リスク対策」「セキュリティ」などの分野から約230社が出展し、3日間で約1万5000人が来場した。今回は関東大震災100年の節目。展示のなかから、防災と都市の課題の双方にアプローチする商品・サービスをピックアップして紹介する。

[防災・BCP×環境]
2m四方に設置できるタフで静かな風力発電
災害時の非常用電源として人口密集地に

人口密集地にも設置できる垂直軸風車の小型風力発電機

風力発電開発スタートアップのチャレナジー(東京都墨田区、清水敦史CEO)は、風向きに依存しない垂直軸風車の小型風力発電機を展示した。全方位からの風に対応し、ゆっくり静かに発電するのが特色。災害時の非常用電源として学校や公園、避難施設などへの設置を呼びかける。

同社は2014年、安全・安心な電力を世界の隅々に届けることを目的に設立。風向きへの追従性と強風への耐久性を高めるとともに騒音やバードストライクの発生を抑えた「垂直軸型マグナス式風力発電機」を開発し、フィリピンや沖縄の島しょ部に設置してきている。

化石燃料を使わない独立電源は、環境負荷の低減や防災・BCPの観点からもニーズが高い。特に最近は都市で豪雨災害が頻発していることから、同社は限られたスペースに設置できる小型の風力発電機も開発、自治体や企業への訴求を強めている。今年2月には第1弾として「Type D(タイプディー)」と呼ぶモデルの販売を開始した。

定格出力100ワットの垂直軸風車と200ワットの太陽光発電パネルを搭載したモデルは、設置スペース2.1メートル四方、騒音レベル49デシベル。秒速3~14.5メートルの風で発電し、それ以上は回転を止めて風を受け流す。コンパクト化を図るとともに風切り音の発生と台風時の破損リスクを抑え、人口密集地への設置を可能にした。

「住宅街の真ん中に設置し、平時は夜間照明として使いながら、非常時にはスマートフォン80台分をフル充電できるくらいの電気をつくれる」と、同社経営企画の赤土侑也氏。同社はこのほかにも、置き基礎によって移動ができる可動式のモデルや、風車に氷が付着しにくい寒冷地用のモデルも開発している。

[防災・BCP×ライフスタイル]
自転車からも充電できるポータブル蓄電池
日常生活とエコ・防災活動をつなげる

ソーラーパネルや自転車からも充電できるポータブル蓄電池

商品・イベント企画のイグフィコーポレーション(東京都渋谷区、岡田直子社長)は、ソーラーパネルや自転車から充電できるポータブル蓄電池「チャージマン」を、販売代理店のサポートマーケティングサービス(埼玉県春日部市、荒川真一社長)のブースに展示した。

直径74ミリ×高さ135ミリの円筒形の蓄電池で、350ミリペットボトルとほぼ同じサイズ。携帯・保管に便利で、平時はもちろん停電時や避難時、アウトドアなど活用シーンは広い。

バッテリー容量は1万400ミリアンペアアワーで、おおむねスマートフォン3台分。USBポートは出力用2口、入力用1口を搭載し、内臓のLEDライトはフル充電で240時間連続点灯、夜間照明のほか点滅機能によりSOSモールス信号も発信する。コンセント、ソーラーパネル、自転車の3種類から充電が可能だ。

フル充電までの時間は、コンセントからは約7時間、折り畳み式ソーラーパネル(別売り)からは最短約7時間。自転車とはジェネレーター(別売り)を介してつなぎ、時速15キロ走行の場合、約10時間でフル充電する。企業などは25個入りのケースで購入し、フル充電状態で備蓄しておけば、複数人に貸し出すこともできる。

ソーラーパネルや自転車からの充電は、ライフスタイルの提案にもつながる。特に、人間の運動エネルギーを電気で貯める技術は同社の独自開発。通勤・通学や買い物、サイクリングなどの日常生活をエコ活動や防災活動に結び付けられるとして、広く普及を図りたい意向だ。

「子どもの自転車につなげば、遊びながら電気をつくれる。そして災害ともなれば、自分で電気をつくる術を持っていることは大きい。家族や周囲に対し『僕が電気をつくってあげるね』と。そうした生きる力の醸成にもつながる」と、同社営業販売室室長の篁直樹氏は話す。

[防災・BCP×観光レジャー]
シーンの変化に柔軟に追従するマルチ機能ワゴン
内部の可変性を高め自在に用途展開

内部を自在に変更して多目的に活用するマルチ機能ワゴン車

キャンピングカー製造販売のトイファクトリー(岐阜県可児市、藤井昭文社長)は、10人乗りワゴン車のシートや内装を自在に変更して多目的に活用する「MARU MOBI(マルモビ)」を展示した。内部の可変性を高めることで使い道を拡大。平時・有事の分け隔てなく使えるフェーズフリーの車両として自治体や企業に提案する。

ベースとなるのはトヨタの「ハイエースワゴン グランドキャビン」。シートをはじめパーテーション、テーブル、キャビネット、ポータブルベッドなどの家具類を脱着式とし、用途に応じて柔軟に取り付け・取り外しする。モードチェンジにより、1台の車を多種多様なシーンで使うことが可能だ。

例えば、普段は公用車・社用車やコミュニティバスとして使い、イベント時はモードを変えて移動事務所や移動図書館、観光PR用受付所、期日前投票所に展開。災害時には緊急物資・人員輸送車をはじめ避難や物資の受付所、救護室・医務室、ペット避難所、授乳・おむつ換え室などに利用する。

「東日本大震災のとき、キャンピングカーが避難に役立ったという話をオーナーから複数聞いて、レジャーだけでなく災害時の生活を支えられることに気が付いた」と、経営推進本部室長兼マーケティングイノベーション部統括長の東川陽平氏。地元・可児市へ第1号車を納入したのを皮切りに、全国へ普及させていきたい意向だ。

自治体・企業がすでに所有している既存ワゴン車の改修も提案。「例えば観光地や温泉街では、ホテル・旅館が所有する送迎用ハイエースが遊休資産化しているケースが少なくない。それらを『マルモビ』に改修すれば、新たな機能が付加され、稼働率が上がる。観光振興にも寄与できる」と話す。