インターリスク総研が国内上場企業にBCM導入調査を実施

東日本大震災やタイの洪水などの大規模自然災害の発生や2012年5月のISO22301(事業継続マネジメントシステム)の発行を受け、企業のBCMへの関心が高まっている。

株式会社インターリスク総研が昨年2012年11月から12月にかけて国内の全上場企業3205社を対象に実施したBCM(事業継続マネジメントシステム)の導入実態調査では、BCPの策定率の上昇のほか、訓練を実施している企業数に大幅な増加が見られた。

■BCP訓練も普及

「策定している」「現在策定中である」「策定する計画がある」と回答した企業は、合計で80.8%となり、前回の調査と比較して12.4%増加(図1)。「策定していない」と回答した企業の割合は、前回調査比で、12.6%減少している。また、BCPに関する訓練を実施している企業は50%以上にのぼり、多くの企業が、BCP構築段階から訓練・検証フェーズに移行しつつあることが伺える(図2)。

回 答

今回調査

前回調査

増 減

策定している

44.7%

30.3%

+14.4

現在策定中である

24.8%

23.1%

+ 1.7

策定する計画がある

11.3%

15.0%

- 3.7

策定していない

18.7%

31.3%

-12.6

無回答

 0.5%

 0.2%

+ 0.3

(図1) BCPの策定状況

回 答

今回調査

前回調査

増 減

実施している

52.1%

32.0%

+20.1

実施していない

43.1%

61.1%

-18.0

その他・無回答

 4.8%

 6.9%

- 2.1

(図2) BCPの実行性に関する検証-BCPに関する訓練の実施状況

一方、現状、取引先にBCP作成を要請している企業はまだ多くないが、取引先がBCPを持つべきと考えている企業は90%を超え、今後は事業継続の取り組みを取引先まで拡大する企業が増加することが見込まれる(図3)。

【取引先がBCPを持つことについて】

必要と考える

90.5%

必要と考えない

 4.5%

無回答

 5.0%

 【取引先へのBCP作成要請】

要請している

11.7%

要請していない

83.5%

無回答

 4.7%

(図3) 取引先の事業継続の取り組みについて

■震災以降、取組を強化

こうした積極的な取組の増加の背景には、近年の東日本大震災やタイ洪水などが事業継続の取り組みに与えた影響が大きい。事業継続の取り組みが加速したほか、事業継続を実現する上で鍵となる経営層の理解が前回の調査と比較して8.9%増加するなど、経営戦略の一貫として、事業継続の取り組みが推進されている(図4)。

回 答

今回調査

前回調査

増 減

事業継続への取組みが加速した

44.2%

42.6%

+1.6

経営層の理解が深まった

50.8%

41.9%

+8.9

特に変化はない

24.2%

28.2%

-4.0

事業継続に関する予算が増加した

 8.6%

5.3%

+3.3

その他・無回答

 3.2%

3.2%

   0

(図4) ①事業継続への取り組みに及ぼした影響

具体的に強化した取り組みについては「安否確認の仕組み構築」「帰宅指示・帰宅困難者への対応」「従業員の意識向上」などが挙げられる(図5)。

安否確認の仕組み構築

63.4%

帰宅指示・帰宅困難者への対応

57.3%

従業員の意識向上

42.9%

コミュニケーション手段の複数化

39.5%

被害想定の見直し

39.3%

建物・設備の耐震強化

33.2%

BCPの訓練

27.8%

事業継続体制面の強化

25.7%

(図5) ②東日本大震災以降、取り組みを強化した事項

■今後の課題

東日本大震災やタイの洪水を受け、今後の課題については「事業継続性を持続的に向上させるための仕組みづくり」を筆頭に「BCP作成の全社展開」「BCMの有効性評価手法の確立」などを改善が必要な取り組みとして認識している。