2023/04/14
インタビュー
インボイス制度の注意点(後半)
前回に続き、2023年10月1日から開始予定のインボイス制度の注意点について、ネクセル総合法律事務所の藪木健吾弁護士に聞いた。今回は適格請求書の要件を満たさない取引などについて解説する。
企業が締結している契約書はさまざまなものがあり、契約形態も取引によって多岐にわたるため、不動産の賃貸借契約のように契約書の締結後は請求書や領収書等を発行しない取引もあるかと思います。
このような取引も契約書の記載を修正せず、請求書や領収書等の発行を行う運用とすることも検討しないまま取引を継続していると、適格請求書の要件を満たさないため、仕入税額控除が受けられないといったことになりかねません。
では、どのように対応すればよいのでしょうか?
適格請求書は必ずしも請求書である必要はなく、明細書や領収書であっても構いません。要は、適格請求書の要件を満たす項目がもれなく記載されていればよいわけです。さらに、複数の種類の書類を組み合わせてインボイスの記載事項を満たすことも可能です。
そこで、①10月以降は契約書以外の他の書類に適格請求書として必要な記載事項を記載する、もしくは ②商慣習的に従前から用意している他の書類と組み合わせたときに適格請求書の要件を満たせるよう契約書に必要事項を記載する、といった対応を検討することが考えられます。
月まとめで支払通知書を交付するような請求レス取引のような場合、支払通知書全体で必要事項が記載されていれば適格請求書等の記載事項を満たすと考えられます。
また、不動産の賃貸借契約のような請求書や領収書の交付をしていない場合でも、適格請求書発行事業者の氏名や登録番号、役務内容等課税資産の譲渡等の年月日以外の事項を契約書に記載しておき、実際の取引が行われた通帳を保存しておくことにより、適格請求書の要件を満たすようにすることもできます。
取引によって保存するべき書類や基本契約書に記載するべき事項等が変わります。時には、支払通知書に取引先からの返品があった場合の記載を行っている場合もあり得るでしょう。この場合、支払通知書が適格返還請求書の要件を満たすかも検討しなければなりません。
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方